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253.バカセカ番外編スレ
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75 :やっきー
2022/10/30(日) 22:31:36
「日向!!」
蘭の声がした。くるっと回ってみると四つあった塔が全て崩壊している。私が最初に塔に入ったはずなのに私が最後だったみたい。現実逃避の時間が長引いていたのかしら。塔の中だと時の感覚が曖昧だったからわからなかった。
私はもう一度狂っと振り向いて蘭を見た。蘭は走り寄ってきていた。その足を止めて固まる。私を凝視する。そして呟く。
「日向、だよな?」
私はニコットワラッタ。
「そうだよ」
あとから続いたルルも蘭と同じように固まった。
「え、なんで偽物が?! まさか本物のひなたさんは!」
七色のルルは私に魔法を打とうとした。えぇ? 本物だって言ってるのにな。
「【光まじゅ――」
「やめろ!!!」
蘭が鋭い眼光でルルを焼き殺した。生き返ったルルはわけがわからないと言いたげに蘭に訴える。
「なんで止めるんですか!」
「日向に手ぇ出すんじゃねえよ!! 殺すぞ!」
「はいぃ?!」
喧嘩かな。喧嘩は良くないというのがヒトの共通認識だと捉えていたのだけれど違ったのかしら。
「まあまあ、二人とも落ち着いて?」
ルルを見る。ルルの目はマスクに覆われていて見られない。私は確認したいことがあったので蘭を見た。綺麗な橙色の瞳の中に、私の二つの青眼が映り込んでいる。やっぱり。
主は私のオッドアイの姿がいたくお気に入りだったはずなのに、どういった気まぐれで私をこの姿にしたのでしょう。これのおかげでルルは私を偽物だと思っているのね。
「私は花園日向。本当よ。証拠になるかわからないけれど、ほら」
私が空間を撫でると、私の偽物の残骸が私の足元に現れた。首から上がなく、体の大半がブレて「ザザッ」という音をあげている。
姿だけは私と瓜二つだったけど、その面影もほとんどない。私が本物だって信じてくれたかしら。これで信じてくれなかったらお手上げだわ。
「これがひなたさんの偽物、てことですか?」
ルルが疑いの眼差しを私に向ける。
「ええ、そうよ。信じてもらえた?
この目がいけないのかしら。幻影でも被せましょうか? それとも笑っているのがだめなの? それはごめんなさいどうにもならないわ。笑いたくて笑っているんじゃないの。
それかこの話し方? 確かにいまの私は子どもの姿で、幼女がこんな話し方をしているのは奇妙に思えるかもしれないわね」
「日向、日向」
蘭が私に話しかけた。
「無理はしなくていい。無理に話さなくていい。無理に笑わなくていい。神の強制力に逆らいたかったら、逆らっていいんだ」
だから、笑っているのは私の意志とは関係ないんだってば。
「なにがあったのかまではわからない。そんなことまでは聞かない。だから、だから」
蘭は悲しそうだ。
「日向が一番楽な姿でいてくれ」
蘭が悲しそうにしている。それはなんだか嫌だ。嫌だから、私は蘭を安心させるためにニコットワラッタ。
「うん、わかった」
蘭は再度固まって、なにも言わなくなった。なにも言わなくてもいいよ。私はヒトの心理に介入する権限を有している。蘭が考えていることはわかるから。
(やっぱりおれじゃだめなんだ)
ああ、それは、そうかもしれないね。
「ほら、早くあの建物に行きましょう? そろそろセカイでのラストバトルが始まってもいい頃だと思うの」
ところでリリはセカイの一部に取り込まれたみたいね。ルルはそれについてはどうするつもりなのかしら。自殺、なんて、そんなことをするから望まない未来を迎えることになったのね。
……いいなあ。
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