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253.バカセカ番外編スレ
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78 :やっきー
2022/11/01(火) 23:42:32
《蘭視点》
セカイはかなり疲弊しているようだ。
迷路は修復したが、おれたちを元の位置に戻す機能は完全に破壊されているらしい。それにセカイを元に戻す機能を司っていたのであろうでかい箱も壊れた。好都合だ。
「この子たちはどうするの?」
日向の声。手にはすすで汚れたガラス片を持っている。
「なんだそれ?」
日向の豹変についてはあまりしつこく言わないことに決めた。質問に質問で返すと、日向は丁寧に答えた。
「霞月と奏芽よ。どうするの? 放っていく?」
つまりそのガラス片にあの二人が入ってるってことか。そういえばあの二人が閉じ込められた六面体の一面にガラス板が貼られていたような。その一部か? というかそれ、ルルがバケモノを倒したあとのあの白い残骸たちから取ってきたものだよな? 決して遠いとは言わないが近くもない距離だ。いつの間に。
「ご名答」
日向はにこりと笑う。複雑な心境だ。
「放っておけばいいだろ。どうでもいいよ」
ふふ、という日向の艶笑。
「ナンチャッテ。この中には何も入ってないよ」
このタイミングを計ったかのように、薄くなってきた白煙の中から二つの人型の影が出てきた。小声で「うげ」とか言ったかもしれない。
「箱の中に入っていたんだもの。箱が壊れたら中身が出るのは当然でしょう?
ちょっとカラカッテみたの。不快になっちゃった?」
いいや。別に。
おれは日向からふいっと視線を逸らし、黒髪の男と茶髪の女を見た。識別しやすいそれらの特徴はかなりボサボサになっている。服もよれていて見苦しい。あ、見苦しいのは元からか。
「ケホッ、らんくん……?」
先に声を出したのは女の方だった。やや呂律が回っていない。よく見ると目もなんとなく光を落としていて、ぼうっとしているようだ。
「それに、ひなたちゃんも――日向ちゃんだよね?」
日向が豹変していることに気づいたのか途端に覚醒し、警戒心を露わにする。仕方の無いことか。それは許容しよう。日向になにかしたらぶっ潰す。
「なにしてるんですか! 早く行きますよ!!」
ルルの怒号が飛んできた。忙しいな。
「もしかして、ルルちゃん?」
今度は男が言った。そっか、二人はルルのこの変な衣装は初見だったな。
「それともリリちゃんかな」
揃っているメンバーで判断しているらしい。ルルかリリかの自分の中での結論を決めかねてうろうろしている。どうでもいいだろそんなの。
「私はルルですぅ。リリは」
ルルがすっと三角錐の建物を指で示す。
「あの中にいます」
女がそちらを見て目を丸くした。
「あれっ、これって遠くから見てた四角錐の建物?」
「そうみたいだな」
は? 四角錐? 何言ってんだよ三角錐と四角錐の区別もつかねえのか?
もしかしたらおれがずっと見間違えていたのかも、なんて愚かな一抹の疑問を払拭すべくちらっと建物を見る。うん。三角錐だ。
「三角錐も四角錐も円錐も、全て見かけのもの。仮の姿と言えばわかりやすいかしら。本来の姿は不定形のものだから、出身世界ごとに見えている姿が違うのよ」
日向が言った。なるほど。他三人は日向の言葉を聞いていない。聞いているのかもしれないがこのことを理解する必要性を感じていないのだろう。おれもだ。
「リリちゃんは先にあそこに行ったってこと? 大変! 一人でなんて危ないわ! 早く助けに行かなきゃ!!」
女が叫ぶ。それを見てルルがぐっと拳を握りしめたのがわかった。
「そうです。早く……」
ざりっと靴を鳴らして、体を反転させた。
「助けに行かなきゃ!!」
あ、馬鹿だ。
瞬間、そう思った。一人で行ったら危ないって言われたばかりだろうが。
「蘭、行きましょう。なんだか面白そう」
おれはくすくすと笑う日向を見て、幼い姿ながら優艶とまで感じさせられた。楽しそうに笑っている、微笑んでいる。その笑顔が偽物であることも、日向の意思に反して浮かび上がってくるものであることも知ってるよ。
「ああ、そうだな」
受け入れよう。拒否するなんて考えたことすらない。おれの一生、いや、全生をかけて日向を救う、手助けをすると誓った。
ついていくよ。どこまでだって。
「日向ちゃんたちまで! 霞月、わたしたちも!」
「わかってる!」
おれたちは無数の魂が蠢く建物へ向かった。いや、建物自体が魂なんだ。死神であったときの力の片鱗で、その正体を認識したいまははっきりと見える。黒い、闇よりも深い、深淵が、蠢いている。
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