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253.バカセカ番外編スレ
 ┗88

88 :げらっち
2022/11/10(木) 23:02:52

気がつくと私は、河原に佇んでいた。
ガールズレインボーの変身は解けていた。

セカイは、成仏できたのだろうか?
いや、成仏ではない。仏になったわけではない。仏教徒以外の自殺者も多く居ただろうし。

セカイは、世界に帰還したのだ。

さて、私の前には川が流れている。
幅は学校のプールくらいだ。さらさらと、静かに水が流れている。水は透き通っているけど、底は見えない。
この場全体に白い靄がかかっている。空気が冷たく、澄んでいる。

これが三途の川だろうか?
あの世とこの世を、
此岸と彼岸を、
世界とセカイを隔てる川だろうか?

ここが霊道だろうか?

つながる世界ごとに個々の霊道があると考えれば、この道が私のよく知っている死生観を表したものであることにも説明がつく。

じゃあこの川を渡れば、現世に帰れるのかな。
早く渡らなくちゃ。
私は足を踏み出した。ジャリっと、靴底が小石を踏んだ。

ここは「賽の河原」だ。

霧がすうっと晴れた。
河原にうずくまって居た者を見て、私は驚いた。でもそれは、心臓が震えるような嫌な驚愕ではなく、また会えたことへの、心が解放される感激だった。

「生まれてきたんだね。」

河原に屈みこんで、小石を積んでいる、赤ん坊が居た。
真っ白い身体に、真っ白い毛並み。静かに石を、積み上げている。

「一つ積んでは母のため、二つ積んでは母のため。」

赤ちゃんはつぶやいていた。稚児が喋っていること自体が有り得ないが、今はそれは自然な情景に思えた。

私は、ゆっくりと、その赤子に近付いた。
私の、子供。
私は言い直した。

「これから生まれ直すんだね。」

子は顔を上げ、真っ青な瞳で、私を見上げた。
乳児とは思えない、固い意志を持った表情で。

「うん。救ってくれてありがとう。一度あなたの一部に戻る。また会う日までさようなら。」

そう一気に言い終えると、彼女は光になった。
娘は私の魔力から生まれた。魔力の姿に戻り、私の体に帰り、私の遺伝子にしまわれる。
光は私の目から私に入った。それだけでリリは私の一部に戻った。

「さあ、帰りましょう。」

私は川に、足を踏み入れた。
トプンと水底に足が付いた。意外と浅かった。水の流れもやさしく、苦にならない。
私は川を進んでいく。靴が浸水し、靴下が濡れた感覚がするが、不快ではなく、空気が入っただけのように感じる。

半ばまで渡ると、何か、気になった。

あっちに、忘れ物をしているような。

私はくるんと、上半身を反転させ、彼岸を見た。


私は今度こそ驚いた。心臓が震えるような嫌な驚愕だった。

子供が、こっちを見て、手招きしていた。
しかしこっちを見ているのか定かでなかった。目の代わりにぽっかりと2つの穴の開いていたから。
節穴のような眼球の跡地は、失明し目が溶け出した時のリリ以上に、視覚情報を得られそうになかった。
その少年は笑みを浮かべていたが、笑ってはいなかった。そしてその金髪は、ひなたに似ていた。

どうやら引き返す必要が、ありそうだ。

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