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253.バカセカ番外編スレ
 ┗9

9 :やっきー
2022/03/23(水) 19:14:12

《蘭視点》

 なんだ、ここ。

 目が覚めて初めて思ったことがそれだった。
 視界一面、白、白、白。光の三原色を全て混ぜ込んだ色がぼんやりとした意識を殴りつける。
 軽い頭痛を感じながら、周囲を見る。おれは道らしき場所で横たわっていた。横には、今朝持ってきた弁当がある。場所こそ変われど、おれの体と弁当との位置関係はさっきまでの、山の中でいたときとなんの変化もない。

「そのまんま飛ばされた、ってことか」

 自分でも驚くくらいすぐに状況を把握した。弁当はとりあえずそこに置いたままにして、立ち上がる。

 まず視界に映るのは、白い壁と白い地面──いや、床と言った方が自然か。壁は子供の体からすれば高く思えるけれど、実際の高さは大したことは無いだろう。床の幅はおれが大の字で寝そべってもかなり余るくらいで、広くはないが決して狭くもない。道は前にも後ろにも直線に続いている。ずっと真っ直ぐに伸びているのか、どこかで曲がっているのかはよくわからない。というか、壁も床も色合いが全く同じで、ぱっと見ただけでは区別をつけにくい。なんともよく分からない空間だ。

 そこまで観察した後、おれはあることを思い出した。

「日向!」

 そうだ。やっと意識がはっきりした。おれはさっきまで日向と一緒にいたんだ。おれがここにいるということは、日向もここにいる可能性が高い。

 改めて周囲を確認する。いない。「日向」と呼びかけたことに対する返事もない。

 試しに壁に触れてみる。壁が何で作られているのかはわからない。そこそこ頑丈に見えるが石造りというわけではなさそうだ。感触はサラサラしているし、なにより凹凸がない。特別な加工が施されているのならともかく。

「跳べば、登れるか?」

 不慣れな場所では、魔法は使わないでおくことが基本だ。魔法を使うことで見えない敵に自分の居場所を知らせることになる恐れもあるし、魔法が上手く使えない可能性もある。例えるなら、何も持たずに海に放り出されるようなものだな。
 誰に聞かせる訳でもない自分の説明に満足しつつ、壁を見上げる。途中に掴めるような突起はないから、一回で登りきる必要がある。

 数歩下がり、助走をつけて、おれは思い切り跳び上がった。

 うん、思った通り、見た目ほど高くはない。これくらいなら充分届くな。
 そう思い右手を伸ばしたが、何故か最上部に手が届かなかった。

「んっ?」

 一瞬めまいがして、急いで壁に手を当てる。そして摩擦を利用して、無理やり体を上げて、余っていたもう片方の手で最上部に手をかける。今度は、ついた。

「なんだ、いまの。
 いや、今はそれどころじゃない。日向、どこだ?」

 疑問を振り払うように頭を二、三回揺らし、前を見る。

 目の前に広がっていたのは、巨大な迷路だった。どこまで続いているのだろうか、スタートもゴールも見えない巨大な迷路。おれが今いるような白い道がほとんどだが、所々に目立たない建築物も見える。そして何故か目を引く、これといって特徴のない、遠くにある三角錐の建物。霞んで見えるほど距離があるのに、まるで建物そのものが、自分を見つけてと訴えているような、そんな気さえ起こる。異色の存在感を放つ建物だ。

 壁を登っても、日向の姿は見えなかった。ここで名前を呼んだら、もしかしたら返事があるかもしれない。

 大声を出すために息を肺に送り込もうとしたそのとき、体に異変が起こった。

 ドクッ

 心臓が突然、激しく拍動した。大きく跳んだだけじゃ、こうはならない。それが原因じゃない。
 次に、息が出来なくなった。そして、体、特に頭や首が急速に熱を帯びる。明らかにおかしい。何が起こったんだ?

 困惑していると、さっき手が届かなかったときに感じたようなめまいがおれを襲った。ただでさえ壁の上という不安定な場所で体勢を維持出来なくなり、おれは後ろ向きに倒れ壁から落ち、頭を強く打ち付けた。

「痛……」

 しばらく打った後頭部をなでていたが、ずっとこうしているわけにもいかない。おれは置いておいた弁当を持って、まずは日向を探すために歩みを進めた。

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