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253.バカセカ番外編スレ
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91 :げらっち
2022/11/15(火) 02:29:32
【瑠璃】
セカイから出て。霊道から出て。私はようやく、使命を終えた。
長いパラドクスの旅、未来の先取りから解放されて、母の体に戻った。
しばらくは、あなたの中に居候させてもらうねお母さん。
いいよ。もう一度あなたを産むその日まで。
一緒に居ようねリリ。
五感を、思考を、痛覚を、快悦を、罪悪を、記憶を、運命を、共有しよう。
私は世界に帰った。
「ただいま。」
ただいま。私の世界。
神が帰りましたよ。おかえりくらい言ったらどうなの?
でも、その世界は様変わりしていた。
一面が真っ赤に塗られていた。足元から地平迄、全て赤。
空だけは真っ青で、目がチカチカした。
私は2本の足で、赤い地を踏みしめていた。周りを見渡す。辺りには誰も居ない。音さえも無い。温度はしない。
なんだろう。
まさか、という疑念が頭の中をよぎった。
それは遺伝子に同棲するリリの声。
あなたが留守の間に、世界を襲うものがあったんじゃない?
神であるあなたがセカイに囚われている間に、鬼の居ぬ間の征服を行おうとする者が居ても、不思議ではないでしょ。
どのくらいの間、世界を離れていたのかさえも、わからない。
下手をしたら、何億年もの時が経っていて、人類は滅んでしまったのかもよ。
そんなはずはない、と私は心で呟く。
「……誰がこんなことを?」
「キミダヨー。キミダヨー。」
私はビクッとした。驚くと同時に、人の声が聞こえたことに、感激した。
でもよく聞けば、それは人の声ではなかった。人のような、人には出せない声だった。どちらかといえば機械に近いような。
カラフルなオウムが、バサバサと飛んできた。
「ハロー。ボクハチャイムチャン。」
「チャイムちゃん?」
オウムのチャイムは喋った。人真似ではない、自身の言葉を。
「ネジフリハ死ヌチョクゼンニ、ボクヲアトツギニ任命シタ。ボクハ3代目ノキャスガーディアン。キミノ守護者デ、後見人ダヨ。」
キャスガーディアンという言葉には聞き覚えがある。
でも、後見人という言葉はわからない。
「後見人?」
頭の中のリリが言う。
後見人というのは、障害者など判断能力の無い人にかわって、財産を管理する役職のこと。
でもこの場合は何を管理するのかな?あなたに財産なんて無いでしょ。
余計なお世話ですぅ!
「マアマア。ソレヨリモ、コノ世界。赤クソメタノハ、キミダヨー。キミダヨー。」
「どういうこと!?全く身に覚えが無いんだけど。」
言葉が無断外出した。リリがマイクを奪った。
ちょっとりーちゃん!あくまでも私の身体なんだけど!
「キミノ精神ハホカノセカイニイッテイタ。ソノ間、キミノニクタイハ赤ノ巨人トナリ、セカイヲ汚染シタ。」
チャイムは私の頭くらいの高さをホバリングしながら話す。
「キミハ邪神ニオチタンダヨ。デモ、元・神ガキミヲモトニモドシタ。同時ニ神ノ座モ奪還サレタ。」
「別に、それはいい。」とリリ。「神のバッジなんてどぶにでも捨ててやる。でもあなたがキャスガーディアンだとしたら、職権濫用だ。ガーディアンは支援員でしかない。キャスストーンの上にも下にも位置しない。」
何が何だかさっぱりですぅ。
オウムは「サア」ととぼけた。
「兎ニモ角ニモ、今後ハボクガキミタチノ“魔力”ヲ管理スル。魔力ノバランスガ崩レタ時、再ビセカイハ赤ク塗リツブサレル。オボエテオケ、“瑠璃”。」
そしてオウムは飛んで行った。
「気を付けて、ルル。」
リリは私にマイクを返した。
「ありがとう。そうする。」
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