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253.バカセカ番外編スレ
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99 :ぶたの丸焼き
2022/12/10(土) 19:38:41
『ねえ、そこの藍色髪の子』
バケガクは学園のくせにどこの大陸にも属さない一つの島だ。学園そのものが島なんだ。でもその島の中に学園としての敷地があって、そこの入口までなら部外者でも案外すんなりと入れる。学園の正門付近まで歩いて、偶然見かけた気弱そうな子に話し掛けた。ほうき通学の他の子はもっと正門に近いところで降りてたけど、その子は正門から離れたところを歩いてた。だから話しかけやすかったんだよね。そう。わたしがバケガクに到着したのは朝だった。
『は、は、はいっ!?』
そんなに驚くかなぁと思いながらぶるぶる震える女の子に近づいた。幸い逃げられることはなかった。足はガクガクしてたけど。
『初めまして。ここの生徒さんだよね? わたしここに用があってさ。先生でも職員でも誰でもいいからさ、呼んできてくれない?』
『え、あ、あ、あの、あの、の、えと』
『名前なんていうの?』
『ひゃああっ!』
『……なんかごめんね。驚かせちゃって』
だんだん面倒くさくなってきて、他の子にお願いするかーとその子から目を逸らした途端、その子が言った。
『わ、わ、わたし、ましろ、真白っていいます! せん、先生呼んできますので、あの、あの、せいもんのちかくでまっててくださいぃぃ!!』
叫びながら真白は学園敷地内の校舎に向かって走って行った。おっそい速度で。そのときは不思議な子だなぁと思ってた。
真白が連れて来たのは気の強そうな女性だった。見た目だけの判断だけど、第一印象から感じ悪くて今でもあんまり好きじゃないんだよね。ライカ先生。
『初めまして。この学園に入学したくて来ました』
そう言いながら案内状を突きつけると、あいつは勝手にわたしの手から抜き取った。多分あいつからしたらわたしから『受け取った』って解釈なんだろうけど、断り文句の一つくらい言えばいいのに。揉めて入学が出来なくなったら嫌だから黙ってたけどさ!
ライカ先生は不審そうな目でわたしを見て、溜め息混じりに言った。失礼な。
『入学式が春にあることくらい知ってるわよね? こんな中途半端な時期に来られても困るのだけど』
『あ、確かに』
ついつい心の声が漏れて、ライカ先生の思うつぼになってしまった。ライカ先生がにやりと笑って言葉を続ける。
『せっかくお越しいただいて申し訳ないのですけれど、冬に出直して来てくださる?』
そこでわたしはカチンときた。なにもそんな言い方をしなくてもいいだろう。腹立つな。校長、いや学園長との対面くらい検討してくれたっていいじゃない。その場でわたしの処遇を決められるほどあんたは偉いの?
『学園長と会わせて下さい。確かに中途半端な時期に来てしまいましたが、その中途半端な時期に案内状が届いたんです』
『そう。それは申し訳ないわ。ウチの学園長は人を振り回すことがお好きでね』
向こうも半分意地になって、どうしてもわたしを中に入れたくないらしかった。けれどわたしだって引けない。地面にかじりついてでもここに留まって、いつか学園長本人が出てくるまで待ってやろうと思った。雨でも雪でも槍でも矢でもなんでも来い。
その必要はなかった。
『私を呼んだかい?』
大柄な女が頭上から見下ろしてきた。見上げると、薄気味悪い笑みを浮かべていた。相変わらずだな、そう思った。
『学園長!』
ライカ先生は慌てて姿勢を正し、にこにこと笑ってみせた。
『この子、学園に入学したくてはるばる来たそうです。では私は授業がありますのでー』
後味悪そうにライカ先生が去ると、学園長はやれやれと肩を竦めた。そして改めてわたしを見て、嬉しそうに黒い目を細める。
『おやおや……おやおやおや、これは』
『親は連れて来てない。見たら分かるでしょ』
わたしが冗談も混じえて言うと、学園長は笑いのバケツをひっくり返した。
『あっははは! 面白いね、君は』
わたしを見下ろしていたせいで、学園長の長い黒髪が肩から垂れた。それを右手で雑に払うと、まるで飛び込んで来なさいとでも言いたげに両手を広げる。
『ようこそ、[聖サルヴァツィオーネ学園]へ。歓迎しよう。さあ、こちらへおいで』
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