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265.VigilanteーThe Masked Riderー
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36 :迅
2022/05/06(金) 11:10:34
見ず知らずの他人ならどうでも良い。
だが、話題の中心になる事を極端に嫌う斗真にとって、この状況は恐ろしい程に好ましくない。
「(しかも、この女は『何故か』俺が仮面ライダーの息子だって事も知ってやがる……!)」
チームワークが重要視され、高い情報共有率を持つ戦隊とは違い、あくまでも個人活動である仮面ライダーの情報は、そう簡単に漏出する物ではない。
にも関わらずだ。
仮面ライダーどころか、むしろ敵対関係にある戦隊の娘である彼女はどう言う訳か知っている。
冗談と言えばそこまでだが、全く笑える冗談じゃない。
「さ、着きましたわ」
───どうぞお掛けになって?
と、メアリは中庭のベンチに座るよう促し、その愛らしい仕草に、不覚にも心臓がドキッとなるのを感じる。
斗真はなるべく上品に腰掛けようと心掛けるが、メアリはさも当然の如く上品に座って見せる。優雅さを感じさせながら、付け入る隙を見せない所作だった。
「さ、お昼にしましょうか」
彼女が指を鳴らすと、護衛二人がまるで分かっていたかのように、籠とティーセットを用意する。
こう言うのは、ドラマや小説の中だけではなかったのか。
「しっかし、お前も大変だな」
小鳥の囀りが心地よい昼下がり。
ベンチに座った斗真は、重い出したように言う。メアリは彼の言いたい事を察したのか、小さく微笑んだ。
「そんな事はございませんわ。相手が怪人以外であれば、誰であろうと分け隔てなく接する。それが、淑女としての礼儀でしてよ?」
「それが、仮面ライダーの息子だとしてもか?」
「勿論ですわ」
───それに、同業者と話すより、大分楽ですもの。
と、彼女は続ける。
その横顔は、まるで何かを嘆くような表情だった。
「……何か、悩みあるなら聞くぞ?」
「……私───」
刹那、中庭に響き渡る悲鳴と爆発音。
その轟音は、良い感じな雰囲気をぶち壊すには十分だった。
「今のは……!?」
斗真が立ち上がると同時に、袖を引っ張られる。目線の先には、小さく頷くメアリ。
彼女も、腹は決まっているらしい。
彼女は凛とした目を斗真に向け、力強い声で言う。
「行きましょう」
「言われなくてもッ」
悲鳴の出所は、おそらく校舎内。
メアリは護衛二人に素早く指示を出し、避難誘導と現場の偵察を任せる。
そして二人は、黒煙立ち昇る校舎に向かって走り出した。
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