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265.VigilanteーThe Masked Riderー
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39 :迅
2022/05/07(土) 13:29:38

 メガホン片手に、こちらに向けて警察官が叫ぶ。
 窓が全開だった事と、刑事の声が大きかった事が幸いし、その警告は二階にあるこの教室までスムーズに届いた。
 足音はすぐそこまで迫っている。
 フラッシュバンが投げ入れられる事を考慮して、直ぐにでもパワードスーツ女以外の三人を抱えて逃げ出すのが、今出来る最善策だろう。
 脳の揺れも治って来た。
 後は、タイミングを見計らうだけだ。
 だが───
「ん〜、もしかして君たち、助かったと思ってる?」
 その考えは、相手の一言によって打ち消された。
「どう言う事だ?」
「だからぁ〜、君たちはこれで助かったと思ってる?って聞いてるの〜」
 女はフルフェイスヘルメットの奥から、間伸びしつつも透き通った声で、斗真の問いかけに答える。
 今思えば、この女は余裕綽々とした態度でいる。
 警察が来ているにも関わらず。
 身構える斗真を尻目に、女は続けた。
「私の実力ならぁ、君たちを殺す事なんて造作も無いんだよねぇ。それにぃ、ケーサツの人たちが来てもぉ、逃げ切るまでに2〜30人くらいは殺せるかなぁ」
 ヘルメットで表情こそ分からないが、その下ではニマニマと不敵な笑みを浮かべているのが裕に想像できる。
 それくらい、目の前の怪人は余裕に満ち溢れていた。
「お前!僕にこんな事をして、タダで済むと思うなよ!?僕は天堂任三郎の息子だぞ!今から、ニッポンジャーを呼んでやる!覚悟しろよ!お前はもう死ぬんだ!」
 そんな中、教室の隅で縮こまっていた少年・天堂誠が喚き出す。
 さっきまでビビり散らしてた癖に、なぜ強気になれるのか。
 だが、パワードスーツ女はその脅しに屈する事なく、それどころか、まるで誠を小馬鹿にするように首を傾げ、クスクスと小さく笑っていた。
「君、馬鹿だねぇ」
 ───君のパパが来るまで、待ってると思う?
 パワードスーツ女の姿がまた消える。
 誠は状況が理解出来ていないのか、「おい、勝手に動くんじゃねぇ!」だのと喚き続けている。
 メアリは護衛の介抱に手一杯だ。このままでは、誠は死ぬ。
 正直死んでくれた方が嬉しいが、それが原因でこの学校の信頼が落ちては、少し面倒な事になる。しかも、今殺されようとしているのは、ニッポンジャー司令の息子だ。
 下手したら、この場に居合わせている斗真たちにも火の粉が飛んで来るかもしれない。
 それだけは、絶対にごめんだ。
「んにゃろぉぉぉぉぉお!」
 斗真は反射的に飛び出し、誠の眼前まで迫ったパワードスーツ女の身体にタックルをする。
 硬質な装甲が生身とでは強度は全く違うが、彼女自身の体重はそれほどでもなかったのか、彼のタックルによって簡単に軌道を逸らし、掃除用具入れに激突する。
 よし、力自体はこっちが上だ。
「この───ッ!」
「させるか!」
 振り解こうとするパワードスーツ女の関節を絞り上げ、斗真は極技の状態に持ち込む。いくらパワードスーツの補助があっても、関節を固定されてはどうしようもない筈だ。
 だが、この拘束もいつまで保つかは本人にも分からない。
 故に、斗真はメアリに向かって叫んだ。
「お嬢!二人を連れて逃げろ!」
「で、でも緋月さまはどうするんですの!?」
「俺が逃げるまでの時間を稼ぐ!」
「でしたら私も───」
「邪魔だ!さっさと行けッ!」
「ッ!」
 ───死なないで下さいまし!
 メアリは二人に肩を貸し、教室から出て行く。
 同時に、パワードスーツ女は極技を無理矢理振り解くと、強化された脚力で斗真を蹴り飛ばす。
 しかし、彼とて馬鹿ではない。
 彼は蹴り飛ばされたと同時に前転して距離を取り、落ちていたアタッシュケースを手繰り寄せる。
 そのまま鍵を開け、中に収められたベルトを取り出した。

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