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265.VigilanteーThe Masked Riderー
 ┗4

4 :迅
2022/04/10(日) 17:02:25

 目覚まし時計のアラームが鳴り響く。
 春の朝日が、カーテンの隙間から部屋の中に差し込んで来る。
「くぁ……」
 アラームを止めた青年は上半身を起こし、大きく伸びをする。隣では黒猫が気持ちよさそうに寝ており、起こさないように気をつけながらベッドから出る。
 カーテンが閉まった部屋は薄暗く、差し込む陽光が青年の輪郭をぼんやりと映し出していた。
「斗真ー、ご飯出来たわよー」
 暫くして、下から母の声がする。
 おそらく、父もいるだろう。
 青年はカーテンを開け、部屋の鏡の前に立つ。
 あの日の翌日から、青年は筋トレを始めた。
 腕からプチプチと嫌な音が鳴ろうと、脚が棒のように動かなくなろうと、二度と誰かを泣かせない為に、強くなる為に筋トレを断行した。
 楽して力を得ることは出来ない。強くなるには、自分を極限まで追い込むしかないのだ。
 その結果、中学校に上がる頃には、素手の殴り合いで勝てる奴はいなくなった。
「もう、五年か」
 鏡の前で、青年は呟くように言う。
 鍛えていた時期は長く感じて仕方なかったが、いざ過ぎると妙に短く感じる。

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