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283.短編小説のコーナー
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206 :げらっち
2024/01/12(金) 20:30:28

SSS 天堂任三郎正義の1日


 彼の名は天堂任三郎。日本を守る護国戦隊、日の丸戦隊ニッポンジャーのニッポンレッド、日の丸を背負う男である。

 2025年、或る夕方、ニッポンジャーの詰め所に1本の電話が入った。それは民間人からの通報だった。
 任三郎の部下であるカプ子はその内容を親玉に伝えた。
「任三郎さん! すぐ近くの住宅街で火災です!! 出動しましょう!」
「なに、それは大変だ!! 歯磨きが終わったらすぐ出動する!」
 任三郎は歯を磨いていた。
「その間に助かる命も助からなくなりますよー!! 一刻も早く出動しましょう!」
「ダメだ! 正義のヒーローたるもの、きちんと歯を磨かなくちゃいかん!! 口内環境も守れない俗物に日本の平和が守れてたまるか!」
 任三郎はカプ子にコップを投げつけた。

 任三郎は10分かけて入念に歯を磨くと、コスチュームに着替え始めた。

 任三郎は日本国旗をマント代わりに羽織った。すると、国旗がほつれているのが目に入ったのか、彼は言った。
「代わりを持ってこい!」
「任三郎さん! マントなんて引っかかったり現場では邪魔なだけですよー!!」
「この非国民!! 私は日の丸を背負って戦っているのだ!! こんなだらしない日本国旗でいいわけが無いだろッ! 今すぐ代わりを持ってこい! 1分1秒を争う世界だ、もたつくな!!」
 カプ子は急いで新品の日本国旗を用意した。
 任三郎はそれを羽織り、トイレを済ませると、ようやく出動した。

 他の隊員は訓練に励んでいたり社内研修を受けていたり非番だったりしたので任三郎とカプ子のみの出撃になった。

 住宅街の一角から炎が上がっており、多数の野次馬がそれを取り囲んでいる。
「何人か逃げ遅れてるみたいだぞ……」
「あ! ニッポンジャーのお出ましだ!! もう大丈夫だぞ!」
 任三郎は人垣を押し除け、炎光を見た。
 既に3軒もの住宅に延焼していた。まるで巨大なガスコンロを見ているかのようだった。家屋が焼かれているのだ。その中から、助けを乞う、臨死の声が聞こえる。
「くっ……もう少し来るのが早ければな」
 そう言う任三郎に対し、カプ子はあんたが歯磨きをしたりマントに拘るせいだろと言いかけたが、処罰を恐れ心の中でつぶやくだけにとどめた。
「まあいい。ここは正義のヒーローとして当然の事をするまでだ!」
 任三郎は腕時計のダイヤルを回す。途端に彼の体は赤いスーツで包まれる。

「大和魂、スタンダップ! 日の丸戦隊ニッポンジャー! ニッポンレッド!!」

 野次馬から歓声が湧く。
 すると任三郎は、火災現場の観察を始めた。燃える建物の中からは悲鳴。一向に救出に行く姿勢は見られないので、カプ子は叫んだ。
「何してるんですかー!!」
「何って見りゃわかるだろー!!!」
 任三郎は逆に怒鳴った。
「今後火災が起きた時どのように救出するのかを考えるために火災についての分析をしているのだ!! 私は大和の国を背負っている。正義のヒーローならこのくらい当たり前だろー!!」

 カプ子はブチ切れた。

「正義のヒーローなら目の前の人を助けろボケがー!!!!」

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