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283.短編小説のコーナー
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25 :迅
2022/07/01(金) 14:37:03

「有終の美……なんて洒落た言葉を使うつもりはないですけど、せめて最後の闘覇祭くらい、アイツには心から楽しんで欲しいじゃないですか」

 竜真はそう言って、玲奈の方を見る。
 その顔に迷いはなく、『何があっても成し遂げる』と言う確固たる決意が宿っていた。

「説得するだけ無駄……って奴だな。良いだろう、そこまで言うならやってみせろ、石動竜真」

 玲奈は小さく微笑み、竜真の肩を叩く。
 その言葉に込められた声色は、かつて『比翼』と呼ばれ畏怖と尊敬を集めた最強の騎士の声ではなく、生徒の背中を押す教師そのものだった。

***

 『雷電女王』こと学園一位の騎士・一ノ瀬彩華《いちのせあやか》は、書類を脇に一人で廊下を歩いていた。

「あの人、『雷電女王』の一ノ瀬会長だよな?」
「あぁ、今日もなんてお美しい……」
「でも怖くねぇ?なんかこう、すげーピリピリしてそうで」

 廊下、大通り、教室と言った学園内を歩く度に、畏怖と尊敬の念に満ちた視線が送られて来る。一年間も浴び続ければ、もはや慣れた物だ。
 ここ最近発行された学園新聞では、彼女の話題で持ち切りだった。その内容は、『大型デパートを占拠したテログループの鎮圧』と言った実戦記事や、『校内での霊装使用規則の改定及び改善』など、多岐に渡る。生徒会室には連日新聞部や外部企業が押し寄せており、その予約の数はなんと、卒業する間近まで埋め尽くされていると言う。
 容姿端麗、才色兼備、文武両道
 史上最年少で『英傑』の称号を得た彩華は、紛れも無い天才騎士であるが、彼女は決してその才能を無闇に振りかざそうとはしない。
 何故なら、彼女は理解しているからだ。
 この力は、悪を挫き弱きを守る為に在る物であり、決して私利私欲のために振るって良い物ではない事を。彼女が放つ抜刀術は、轟く雷鳴の如く悪を斬り断つ。

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