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283.短編小説のコーナー
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31 :げらっち
2022/07/17(日) 22:50:01
ゲームレンジャー
The Story After Game Over《ゲームオーバーの後の物語》
0ー1
2022年。
とある、夜。
世界をゲーム化せんとす悪の結社『GWC』。いつも昼間の無差別爆撃などロシア軍のような戦争の伊呂波の伊も理解していないような攻撃ばかりしてくるが、夜間の奇襲攻撃なども充分に考えられる。
ゲームレンジャーの千博・翔・涼・信穏・怜奈の5人は、夜間パトロールを開始した。1人1人、それぞれのルートを辿っていく。
5人はただの平凡な高校生であった。戦士に選ばれた理由は、彼らが部類の「ゲーム好き」だったからだと、ゲームレンジャー創始者・機田学は言った。
「冗談じゃない。」
千博はそうぼやいた。低い声は夜の街にすぅっと吸い込まれて消えた。
千博はゲームが好きだった。その点に異論は無いし、誰にも負けたくない。驚異の身体能力と人間離れしたアクションで、フィールドを縦横無尽に駆け回る。リアルの戦争さながらに、銃を持って敵兵を撃ち殺す。はたまた、ポップな世界で愛らしいマスコットと共に、頭をひねってパズルを解き明かす。危険なレースでデッドヒートする。自分だけの村でのんびり暮らす。学校では手に入らないような、刺激的な恋愛をする。全て画面の中で行われていることだ。リアリティがあれど、それは視覚と聴覚のみの世界だ。五感のうちの2つだけではないか。嗅覚も味覚も、触覚も痛覚も、伴わない世界。もしくは、未来のゲームではそれらも味わえるのだろうか。ともかく、今はそうではない。
千博は腕につけている小型ゲーム機、『ゲームチェンジャー』を睨みつけた。
「ふざけやがって。」
今すぐ地面に叩き付けて、踏み潰して壊してやろうか。俺にはそれができるんだ。だが千博はそうしなかった。仮にも、これは重要な変身アイテムだ。自分がゲームの主人公の様なヒーローになって戦う。ゲームが現実と成る。はじめ俺は、それを楽しんでいた。夢のようだとさえ思った。だが興奮と快感は、不満と諦念に場所を奪われた。現実には痛みと疲労、時間と死、疑念、そして意味が付きまとう。それは俺の求めていた物ではない。
ゲームは現実とは非なる物、だからいいのだ。
だが俺はゲームレンジャーを辞めない。
理由は二つある。
世界の平和のため?そんなものは掲げない。世界を守るのは俺の役目ではない。それは大人がすべきことだ。
第一に、千博はGWCを快く思っていなかった。GWCが世界を侵略する悪者だからではない。世界のゲーム化、それは千博の夢を壊すことだったからだ。ゲームの力を濫用する、到底許せぬことだ。
第二に、千博には4人の仲間が居た。
翔・涼・信穏・怜奈。同じくゲーム好きの幼馴染みたちだ。5人はゲームによって出会い、育ち、つながった。千博は思う。他の4人も、それぞれに思うところがあって、ゲームレンジャーを辞めないのだろう。あのおちゃらけの涼だって不安を感じているはずだ。だが立派に戦っている。
そうであれば俺はゲームレンジャーを辞めない。
「4人の友と、戦い続けるんだ。」
その声は闇に消えていくはずだった。
「ご立派だな。」
返答があった。だが千博はそれを心の声と解釈し、気にも留めなかった。
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涼はゲームレンジャーのボケ担当、能力こそ劣れど、憎めないキャラで皆に愛されていた。
彼は道端のベンチに座り、パトロールをさぼってゲームをしていた。
「ん?」
夜の闇を撹拌するように、まばゆい光が辺りを照らした。ヘッドライトだ。
車が、突っ込んでくる。
「わ、わああ!!!」
涼は逃げようとするも足がもつれた。そして次の瞬間には、大きな鋼鉄の突撃を受け、空を飛んでいた。ドンと地面に叩き付けられ、そこで彼の残機は0になった。
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