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283.短編小説のコーナー
 ┗33

33 :げらっち
2022/07/18(月) 01:21:32

 0ー3


 千博は怜奈の居場所を聞くなりすぐにそこに向かった。そう遠くはない。チェンジャーの画面に映る不安げな怜奈の顔を見つつ、足早に移動する。瀬川公園。ここに居るはずだ。
「ハード中のハードだぜ……」
「きゃあっ!!」
 チェンジャーの中、そしてすぐ近くから同時に悲鳴が聞こえた。画面が暗転した。「怜奈!!どこだ!?」もしチェンジャーがスマートウォッチの役目を果たしていたなら、千博は自分の脈拍が150にまで上昇したのを目にしただろう。
「チ……ヒ……ロ……」
「怜奈!!!」
 近くの茂みの中に怜奈の姿はあった。怜奈は仰向けに倒れ、顔を真っ赤にして、目を潤ませていた。首には鉄の輪がガッチリとはめられていた。「怜奈!駄目だ!しっかりしろ!!」千博は少女に覆いかぶさり、悪辣なる輪を外そうとした。だが輪はどんどん縮んでおり、外すどころか指をかけることすらできなかった。怜奈の呼吸は完全に遮断され、ピクンと痙れんしたきり、動かなくなった。千博は怜奈の首をかきむしり、身体を揺り動かし、無駄だと知って、そして泣いた。

「怜奈……なんで……」

 俺は好きだった彼女を、そっと抱きしめた。

 涼も、信穏も、怜奈も、手厚く弔わねばなるまい。
 彼らの家族は、親は、一体どんな顔をするだろう?

「……ふぅ。」

 俺は立ち上がった。

「翔の元に行かないと。」

 千博はふらふらと翔の家に向かった。翔と機田学と共に、GWCに反撃する。
 慣れ親しんだ翔の家が見えてきた。
 凶悪な一瞬だった。その民家は、そこに宿っていた数多の思い出と共に破裂した。火炎が夜空に噴き上がった。爆風で千博は尻餅をついた。轟音が住宅街を疾走し、吞気な人々が家々から顔を出した。

「しょーーーーう!!!」

 俺は腹の底から叫んだ、そして背中に金属が突きつけられていることに気付いた。銃だ。
 俺は太い手に首を掴まれ、路地裏に引き込まれた。

「ゲームレンジャーはここでゲームオーバーだ。」

 しゃがれ声が後ろから死刑を宣告した。
 なるほどな。
 千博の心にあるのは奇妙な納得だった。最後に死ぬのは俺というわけだ。

「抵抗しないのか外来千博。最後だから教えてやろう。俺はGWCのウィユー。お前らを恨み、死を配っている者だ。お前が死ねばゲームレンジャーは全滅だ。邪魔者は無くなる。世界ゲーム化計画は、大成だ。ゲームクリアだ。」

 知ったことか。
 感情の容量が氾濫し、洪水をおこし、堤防は決壊し、心は冷たい水の中に沈み込んでしまった、
 さあ撃つがいい。4人の友と同じように、俺を殺すがいい。
 涼・信穏・怜奈・翔――彼らが生きていないなら、俺が生きている意味などどこに有ろう?戦い続ける意味などどこに有ろう?

 だが、どうせ最後なら。
 俺を死にやる者の顔を拝ませてもらおうか。

 俺はぐるんと振り向くと、相手の銃口をむんずと掴んだ。包帯に全身を包んだ不気味な敵の姿があった。1フレーム後に銃が火を噴いた。千博は心臓を撃ち抜かれた。


 GWC首領・イッチスは、スイッチをパチンと切り替えた。それで世界はゲーム化した。お終い。

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