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283.短編小説のコーナー
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41 :迅
2022/09/20(火) 21:28:58
静まり返った暗闇に響く、一発の銃声。
反響した銃声は次第に暗闇へと飲み込まれ、廃墟は再び静寂に包まれる。程なくして、一人の男が片口を押さえながらフロア内に現れる。
まるで、自分を追う『何か』から逃げるように。
続いて銃声が響き、逃げ惑う獲物を追跡する猟犬の如く、男の背後から三発の弾丸が飛来する。
更にその後ろから現れたのは、負傷した男を奥へ奥へと追い詰めるようにズボンのポケットに手を突っ込んで歩く、コートを羽織った長身の青年。
目深に被ったフードによって見えないが、狐面に描かれた赤い模様が、廃墟に優しく差し込む月光を反射するように、妖しく鮮やかに輝いていた。
やがて逃げ場を失ったのか、それとも逃げる体力が無くなったのか、男は壁にもたれ掛かるように座り込む。
追いついた青年が男の眉間に添えたのは、冷たい銃口だった。
ゴリッと言う固い物を押し付ける鈍い音が鳴り、青年は手慣れた動作で撃鉄を起こす。
自分の最期を悟った男は、年不相応の涙を流して命乞いを始めた。
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