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283.短編小説のコーナー
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42 :迅
2022/09/20(火) 21:29:47
「頼む…私を優勝させてくれ……。私は、息子を助けなきゃいけない。その為にも、金がいるんだ…だから…頼む……ッ!」
年齢不相応な嗚咽を漏らし、まるで大事なものを失くした子供のように啜り哭く男。
青年は肩をすくめると、そっと銃口を退かせる。
『助かった』と思ったのか、男の瞳に希望の光が灯り、反射的に感謝の念を伝えようと口を開いた。
「あ、ありが───」
刹那、三発の銃声が男の顔面を穿った。
「───ぱぇ?」
間の抜けた声を上げ、前のめりに倒れ込む男。
青年はさっきまで男だった肉塊を見下ろし、氷点下まで冷え切った口調で言う。「御涙頂戴の話をすれば、見逃して貰えると思ったか?」
と。
生憎、そのような優しさは持ち合わせていない。
今の彼には、他人を同情してやれる程の時間と、精神的余裕はないのだ。
男が完全に動かなくなったのを確認すると、青年はスマホを開く。すると『木端(こば) 貴大(たかひろ)』と言う名前に横線が入り、アイコンが消滅。同時に、画面一杯に表示される『Congratulation!!』の文字。
それは、この"ゲーム"の終了を意味していた。
『おめでとうございます、草薙様。今回のデザイアゲームの優勝者は、貴方様になります』
インカム越しに聞こえる女性の澄んだ声が、ゲームの終了と優勝者の名前を知らせる。
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