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283.短編小説のコーナー
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52 :迅
2022/09/21(水) 20:29:55

「まさか、お前が自分から来るなんてな。幸貞」

 だが、新は驚いた様子もなく椀を置く。
 幸貞と呼ばれた青年は、小さく鼻で笑った。

「俺がお前に接触する理由なんて、一つだけだろ」
「……デザイアゲームか?」

 「御明察」と、足を組みながら告げる幸貞。
 彼は東京エリアが誇る"デザイアゲーム"屈指の上位ランカーであり、新の中学校以来の友人。同時に、一位の座を巡ってシノギを削る好敵手だ。
 東京エリアの全プレイヤーがざわついても可笑しくない状況だが、新は目もくれず食事を再開。
 今は、開催期間外だからだ。
 一方、黙々と食べる新を他所に、幸貞は攻撃的な笑みを浮かべながらスマホの画面を見せて来る。

「デザイアゲームの開始告知だ、開始は今日の放課後からだ」
「おいおい、敵に有用な情報をくれて良いのか?」
「関係ねェ、俺がお前に勝つだけだ」
「今の言葉、そっくりそのまま返すぜ」

 幸貞と談笑を交わす事一分。
 徐に席を立つと、親指で食堂の外を指差す。

 『続きは向こうで』

 と言う事だろうか。
 あと十分くらいで予鈴が鳴ってしまうが、逆を返せば、あと十分も時間があると言う事だ。
 それに、重要な話である可能性も否めない。

「何か欲しい物は?」
「俺たち二人が持ってる情報の等価交換だ」
「乗った」

 新も席を立ち、幸貞の後ろをついて行く。
 デザイアゲームでは、期間中各プレイヤーにのみ情報が配布される時がある。その情報が有益か無益か、嘘か真かは不定だが、『自分の知らない情報』というのは、それだけで価値が跳ね上がる。
 何せ、相手から有益な情報を引き出せれば、実力者ならそれだけで有利になれるからだ。
 一説によると、提供される情報は上位ランカーであればある程、信憑性と有益性が増すと言う。
 根も歯もない噂話に過ぎないが、もしこの噂話が本当なら、上位二位を独占しているこの二人の持つ情報は、ダイヤモンド以上の価値がある。

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