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283.短編小説のコーナー
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53 :迅
2022/09/21(水) 20:30:07

「ここなら……多分、誰もいないな。立ち話もなんだし、あそこに座って話しでもしようや」

 学食のある総合棟から少し離れた中庭に行くと、幸貞はベンチに座り隣を軽く叩く。
 新が隣に座ると、彼は早速本題に切り込んで来た。

「早速だが、今日開催されるデザイアゲームじゃ、高難易度イベントな始まるらしい」
「高難易度イベント?」
「あぁ、何でもクランじゃないと、まともに攻略する事すら出来ないそうだ」
「そりゃあ、とんだクソゲーだな」

 クランとは、デザイアゲームで認可されている最大最低人数共に無制限のチーム機能を言う。
 メンバーには専用のコミュニティが用意され、報酬の山分けも出来るなど、実力の低い一般プレイヤーにとっては夢のようなシステムと言える。
 しかし、その一方で新や幸貞のように、単独で上位をキープ出来る実力者からは敬遠されている。
 理由は単純で、単独で上位を維持出来るなら、態々群れる必要が無いだけの話だ。
 
 当然、連続優勝記録保持者である新からしても、間接的とは言え幸貞の口から『クラン』と言う単語が出て来るのは、実に意外だった。

「俺が話せるのはここまでだ。次はお前が吐け」
「吐けって……映画かなんかかよ……」
「スパイ映画みたいで雰囲気出るだろ?」
「出ねェよ」
「まぁ、それでも情報は聞き出すけどな」
「はぁ…しょうがねぇな……」

 新は言の葉を紡ぐ。
 "デザイアゲーム"の根幹を揺るがしかねない、重大な情報を。
 全てを語る頃には、幸貞が訝しげな表情を浮かべていた。

「それは…マジで言ってんのか?」
「俺が言ってるからマジだが、この情報が本当かどうかは分からん」
「そうか……」

 幸貞は顎に手を当て、熟考する仕草をとる。

「仮にそれが本当なら、お前はどうするんだ?」
「姉さんの死因をGMに直接聞き出す」
「お前らしいな」
「あぁ…そして、必ず姉さんを殺した相手を俺が───」

 新が言葉を遮るように、予鈴が鳴る。
 スマホのロック画面にある時計を見ると、タイムリミットはあと五分まで迫っていた。

「続きは、放課後だな。首洗って待ってろよ?チャンピオン様」
「……お前こそ、背中から刺されないようにするんだな」

 立ち上がった二人は、教室に向かって歩き出した。

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