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283.短編小説のコーナー
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62 :迅
2022/09/22(木) 19:34:42

「別に読書の邪魔になるから、ここじゃない静かな場所でやって欲しいなーってだけだが」
「あぁ!?じゃあテメェがどっか行けや!」
「はぁ……ここ、僕の席なんですけど?」

 ため息混じりにわざとらしく言うと、取り巻きのこめかみから鳴る何かがキレた音。
 何か喚き散らした取り巻きは、力任せに拳を突き出して来るが、遅い上に軌道が分かり切ったテレフォンパンチなど、捌く事は容易い。

 新は拳を掴むと、流れるような動きで関節を捻り上げ、取り巻きを床に組み伏せる。
 一瞬の出来事に、取り巻きは眼を白黒させていた。

「まだ、続けるか?」
「……おい、行くぞ」

 実力の差を悟ったのか、リーダー格の男は顎をしゃくって離れて行く。取り巻きを掴む手を離すと、まるで尻尾を切ったトカゲのように走って行った。

「……これで、漸く読書に専念出来るな」
「あ、あの……ありがとう、草薙君。また、助けられちゃったね……」
「礼なんざいらねェよ、気持ち悪い。感謝の気持ちがあるなら、さっさと消えてくれ」

 まだ何か言いたげだったが、颯太は遂に諦めたのか踵を返して去って行く。
 時計を見ると、約束の時間まであと少しだった。

「さぁ、ゲームスタートだ」

 次の瞬間、放課後を告げる鐘が鳴る。
 それ即ち、デザイアゲームが始まる合図だった。

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