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283.短編小説のコーナー
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66 :すき焼きのタレ
2022/12/10(土) 03:07:20
久しぶりに小説アプリを開いてみたらなんか訳分からんとこで執筆やめてた、プロットも一切ない話の内容一切分からない謎作品があったので深夜テンションで読み切りにしてみました。ドキュメンタリーだと思って読んでください。
朝目覚めたら家族がパクチーパクチー言うようになっていた。
「ドゥーユーノーパクチー」
まだ春も来てないけれど、今年の流行語はこれで間違いないだろう。にしても、どこから流行り始めたんだろうか。全く意味が理解出来ないから、とりあえず「早く飯くえよ」ってことなのかな、と思っておく。寝坊したし。
天気予報もパクチー。お日様活発だし見るからに雨は降らなさそうだ。他には時計がパクチー。LEDパクチー。母さんの靴下の柄がパクチー。あと家の庭もパクチー。
で、案の定食卓もパクチーだらけ――というわけではなかった。パクチーパクチーうるさすぎて早速耐えられなくなりそうだったけど、食パンが食べられる生活に改めて感謝したい。イチゴジャム最高!
「はちく」
学校に着くと―知ってたけど―パクチーの話題であちこち盛り上がっていた。というか、パクチー連呼でうるさいだけなんだけど。
数学教師もパクチーに毒されていた。数式のちょっと空いてるところにパクチーの絵をモリモリ描いている。ヤクチュウの描いた絵くらい下手くそだ。あとルートパクチーって何だよ。
まあいいや。まともに話聞かなくても、「パクチー」ってノートに書いておけば、とりあえず帰ることはできる気がする。
帰る前にパクチー買ってくか。肥料は要るんだろうか。
「パクチーすき?」
一人のときに物音がしたときくらいビビった。聞き慣れた言語なのに、一瞬頭をすり抜けてってしまった。今日の地球はドゥユノパクチ、だかを軸にして既に半分くらい回ったんだから仕方ない。
「パクチー……多分、すき」
「どこがスキやねん」
パクチーの好きなところ……あの……あれあれ……例えばこんな……、ごめん分からない。
ぶっちゃけた話をすると自分はパクチーにわかだ。
「ワタシは美味しいと思います」
「?……なるほど」
「、……………」
「…………」
こいつもパクチーにわかかよ。美味しいの一言で会話が途切れてしまった。歩きながらパクチー発してる人に話しかけたほうがまだもう少しキャッチボール出来たと思うよ。
でも実際はパクチーガチ勢にデッドボールくらわせ乱闘騒ぎだろう……誤った知識でもの好きを名乗ってはいけないと、ほんとに思う。最初に投げたのがパクチー無知勢だったことがせめてもの救いだっただろう。早く気付いてくれ。
そんなこんなで家に帰ってしまった。家族には会いたくなかった。イチゴジャムで片面を固めた食パンが今日はあまり美味しく感じられなかったからだ。無知からするとパクチーは汚いイメージがある。何でかは分からないけど。
とりあえず家の庭に出て、15円レジ袋いっぱいに摘めてきたパクチーを一つずつ並べ始める。肥料はとりあえず効き目が良さそうな「まぜるな危険」シリーズにしておいた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
怖っ!!!
ビックリしてまぜるな危険をぶちまけてしまった。身にかからなくてよかった。
しかし突撃してきた家族どもはもっと怖かった。
「アアアアアアア!!アアアアアアアア!!」
瞬間四面楚歌。360°いたるところからタックルされた。運悪く、まぜるな危険プールにパシャパシャしてしまった。これ溶ける?やばくね?
でもそんなことより家族を慰めることに必死だった。
「ごめん!なんか分からないけど、ほんとごめん!パクチーにわかで、ごめん!」
すると呪いが解けたかのように家族は皆倒れた。と思いきやすぐに起き上がり、
「今日の料理はパクチーバイキングよ」
と耳元で囁いてきた。耳は2つしかないのに家族3人分の声がそばで聞こえた謎にもそのときは気付かなかった。
そんなことより、
「パクチーって、食べられるの?」
てか、パクチーって、何ぞ?
「ドゥーユーノーパクチー」
手当たり次第に声をかけてみたが、振り向いてくれる人はおらず。
ようやく1人振り向いてくれたが、気付けば視界が緑がかった?暗闇になっていた。目瞑ったときにぼんやり見える目蓋みたいな色。
パクチーを顔に貼り付けられていた。
もはや怒りの感情は湧かなかった。
「パクチー、臭っ」
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