スレ一覧
┗
283.短編小説のコーナー
┗88
88 :げらっち
2023/01/14(土) 16:31:27
俺の名はクリボー。
種族名であり個体名ではない。俺らに個体名は無い。俺の代わりなどいくらでも居る。踏み潰されようが燃やされようが、土管から無限に湧き出す。その生命力が取り柄。
かのマリオも気を抜けばクリボーが死因となる。当たって砕けろ、数の暴力が俺らの矜持。
そんな俺ら、クッパ軍団での待遇は良くない。いや、悪い。
配置されるとしたら草原や地下。本城は愚か支城にさえ置いて貰えることは無く、クッパ様に謁見する機会も無い。
同僚や上司からの風当たりも強い。主任カメック様はこう言う。
「生意気なことを言うんじゃないよ、クリボー如きが! お前らは1-1の守衛でもして居な! 支城の敷居を跨ごうなんて烏滸がましいんだよ! 裏切り者の分際で!」
俺は生まれた時からクッパ様に忠誠を誓い、クッパ様に命を捧げる覚悟をしている。
では誰が裏切ったか。
俺たちの「先祖」だ。
キノコ王国を裏切り、クッパ軍団に寝返ったキノコがあった。
初代クリボー。驚異の繁殖力で無尽蔵に子孫を残した。その遺児たちが、クッパ軍団でこき使われている。
「カメックのババアデスクワークばかりで現場の苦労を知らねえんだ。あれで俺らの給料の3倍は貰ってるときちゃやってらんねえよな」
隊長がそう言った。
「はい。でもマリオを殺せば特別賞与があると聞きます。俺たち雑魚にも、夢はあります」
「そうだな」
隊長はニヤリと笑った。
「だがマリオもいくらでも蘇る。果たしてマリオと俺らクリボー、どちらの方が生命力があるのか」
「新米である俺にはそんなことはわかりません。そもそも、俺らとマリオでは生命のシステムが違っている筈です」
「では時間だ。クリボー軍団、出発!」
持ち場に向かっていると、空中に固定されたブロックの床の上から俺らを見下し、声を掛ける者があった。
「おい裏切り者の雑魚! 命を捨ててでもマリオの残機をちっとは削っておけよ! 俺らの仕事が楽になるようにな! ヒャッはっは!」
ハンマーブロスがハンマーを投擲してきた。俺たちはそれをかわす。当たったら簡単に死ぬ。
こいつらは亀一族の上級兵士なので俺らより余程位が高く、クリボーを殺しても看過される。そりゃ、飛び道具がありゃ出世もするよ……
道中多くの先輩たちとすれ違う。
ジュゲム。こいつも亀一族。有給をしょっちゅう使って職場から姿を消す。俺たちには有給なんて使わせてくれないのに……
テレサ。夜勤専従だし抑々部署が違うのでほとんど顔を合わすことが無いが、会ったらパワハラまがいの嫌がらせをしてくる卑劣な奴。
ボム兵。物言わぬ特攻隊。
少し親近感が湧くが、ただの兵器なので、意思疎通は図れない。
ヘイホー。元はクッパ様ではなくマムーという異世界の悪党に付き従っていた奴らだ。だのに、今は契約社員としてクッパ軍に居る。
外国人のように言葉が通じず、コミュニケーションが取りづらい。俺らとは違う人種だ。
1-1入りする。
ノコノコ。俺たちと同じセクションに配置されている他、各地で見かける。
緊張感無く踊り歩いていやがる。これでもクッパ様と同じ亀一族というだけで俺らより給料が高い。
こいつらの不注意でコウラの流れ弾を喰らい、多くの兄弟が死んだ。ヒヤリ・ハット報告書は、何故かクリボーがか書かされている。
こんな奴らが俺らより格上とは、ムカつくぜ……
「よし、マリオがうっかりぶつかってしまうような位置につけ!」
隊長の掛け声にて俺らは三々五々、散って行った。
だが、何処に行けばいいのだろう。新米の俺にはわからない。
「隊長、どうすれば?」
「俺が必勝法を教えてやろう。穴のすぐ傍に陣取るのだ。マリオは着地時が最も脆く、穴を避ける余り穴の近くに居る俺たちにぶつかってしまうことが多い」
「成程、流石隊長! 殺したマリオは星の数!」
隊長はスタスタと穴の近くに歩いて行く。俺はそれを追う。
「ギリギリまで穴に近付くんだ」
「はい」
隊長は尚も歩く。
「そろそろいいんじゃないですか?」
「もっとだ」
「え?」
「ギリギリを攻める」
隊長は歩調を緩めることなく奈落に迫って行く。俺にその勇気は無い。
流石クリボーの中のクリボー。痛みを痛みと思わず、怯まずマリオにぶつかって行き、功績を上げた人だ。
俺は尊敬のまなざしで隊長を見ていた。隊長は何かに憑りつかれたように、穴に向かって行く。このままだと、落ちる。
「隊長、止まって下さい!!」
隊長は止まらない。
「たいちょおおおおおおおおお!!?」
隊長は真っ直ぐに、穴に落っこちていった。
[
返信][
編集]
[
管理事務所]