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317.幻想の叶え歌
 ┗4

4 :露空
2023/01/10(火) 18:48:52

頭の中が曇っている。濃く深く。
俺は何処に居たんだっけか。
なんだか、記憶と比べて地面の感触が違う気がする。
頭が痛い。打ったのか?
重い瞼を開くと、俺が居たのは知らない和室だった。
「此処は……?」
目を動かし見つけた青年に問う。
間髪入れずに、気が抜けたような声でえっ、と漏らした。
「う、麗さぁん!彼起きました!」
医者にしては何とも言い難い感じだ。

麗と呼ばれた人が青年と一緒に枕元まで来てくれた。
上半身を起こした俺を見て「大丈夫?痛くない?」と心配してくれる優しそうな人だ。
「私は桃樹麗。君、名前は?」
「世透琥夏です」
「いくつ?何年生?」
「十三歳で、今月中二になります」
「誕生日は?」
「七月の二十三日です」
単に俺の情報を確認しているのか?それとも意識がはっきりしているか確かめているのだろうか。
「そう、なら湊斗と近いね。ほら」
さりげなく話しかけているが、いかにも彼に自己紹介を促しているようだ。
「うん。あっ、それで、遅れたけれど僕は詠壱湊斗っていいます。七月十九日生まれの二十一歳。流戟隊に所属してる」
「はっ、初めまして」
硬い俺の声から緊張しているとわかったんだろう。麗さんが口を開いた。
「ううん、緊張しなくていいよ。それでね、どうして今こうなってるかの話なんだけど……落ち着いて聞いて」

さっきまでのにこやかな顔から変わって、少し深刻そうな顔になる。
「私達は流戟隊。灼狩りをしてる戦士。そして、琥夏君は、此処の近くで灼に襲われて倒れてたの。覚えはない?」
「灼、ですか……?」
そうだ。俺は出かけた途中で何かに後ろから襲いかかられた。何処に行こうとしていたのかはよく思い出せない。必死に抵抗したけれども駄目だった。
「怪我は、程度から見るに灼の爪によるもの。頭に集中していたから灼は琥夏君より背が高かったんだと思う。それと倒れた時にできた傷。気絶の原因は倒れた時の軽い脳震盪ね」
どれも重傷じゃないから大丈夫、と麗さんは付け加える。
「そうですか。ありがとうございます。此処まで運んで布団に寝かせてくれたり、怪我の処置もしてくれて……」
そして俺は決めた。いつか言おうとしていたことを此処で。
「麗さん、湊斗さん。俺、戦士になって灼を倒したいです」

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