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317.幻想の叶え歌
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6 :露空
2023/02/06(月) 21:03:17
二話
「麗さん、湊斗さん。俺、戦士になって灼を倒したいです」
いきなり俺の口から発せられた言葉に二人は驚いている。それもそのはずだ。初対面で、会話して五分程の怪我人からこんなことを聞くとは思わないだろう。
「昔からの夢だったんです。いつかなりたいと思ってました。勿論、戦士は命懸けだって知ってます。戦うのも、ただ強いだけじゃ駄目だって。憧れだけでなれるものじゃないけれど、俺は、人が灼に脅かされないようにしたいんです」
「……そうね。じゃあ、もう一度灼と戦士の話をしようか」
湊斗さんが正座をさらにしっかりと組み直した。そして麗さんがゆっくりと話し始める。
「まず『灼』。灼熱の灼と書く。日が落ち暗くなってから動き始める。昼間でも灯りが無い建物の中や日が差さない影では活動している。つまり明るいところを嫌うのね。身体能力が高くて、疲労や傷の回復がとても速い。無くした四肢も再生できる。心臓を壊して倒すまでは半永久的に生きる。寿命が無限なの。これは灼の細胞分裂が非常に活発且つ限界が無いから。基本的には物を食べずに生きることができる。そして、重要なのは人間に灼の血液を流し込んで生まれるということ」
戦士についても、戦士は隊に所属すること、そうしてできた隊は約五十隊存在すること、戦士及び隊は非公式でありほぼ善意での活動であることを教えてもらった。
これが基本要項かな、と一つ深呼吸をする。
「僕たちは流戟隊。今のところ僕と麗さんともう一人の三人が所属している。僕とその一人は戦士として灼狩りをしていて、麗さんはこの家で灼の研究と戦士や灼の被害に遭った怪我人の治療をしている」
如何にも自分の出る幕がやってきたというように湊斗さんが話した。
「琥夏君はこの戦士というものをよくわかってくれている。もし、この気持ちが変わらなかったら、明後日の正午また此処に来て」
麗さんがそう言って何かを書きつけ俺に渡したのは住所だ。俺が住んでいる町の隣の市が記されていた。
「体調は大丈夫そうだね。このまま帰れそう?」
傷は痛むが歩けそうだ。
「知らない場所だよね、帰り道がわかるまで一緒に行くよ」
途中まで湊斗さんが着いてきてくれることになった。
「麗さん、本当にありがとうございました!」
「いいのよ、お大事にね。……そうだ、灼によってできた怪我だってことは家の人に伝えてね。戦士のことはまだ言わなくて大丈夫」
麗さんの家は意外と近く、俺の家の最寄り駅に着いたところで湊斗さんと別れた。
「琥夏君は強いんだね。灼に襲われて怖いはずなのに戦士になりたいって言えるなんて。『新隊会議』、待ってるよ」
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