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340.シャインシックス【小説スレ】
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39 :ダーク・ナイト
2023/02/19(日) 18:33:23

第三十七話 「怪しの山小屋 その5」

「え? は?」
ジーナはこの場が理解できていないのだろう。
ひたすら慌てている。
みぞれとジーナは心の中で、
(あの方、琴平 風香という名なのね……。)
と、脳のメモに書きつけていた。
そんな三人をお構いなしに美桜は話を続ける。
「お姉ちゃんは、昔はものすごい足が速くて陸上選手だったの、本当に自慢のお姉ちゃんだった。だけどある日、台風に襲われてから陸上選手として活躍できなくなって。私は見捨てた。」
「は?」
来夢が言った。
来夢の口から飛び出すにしてはおかしい言葉だ。
「あのですねぇ……それは本当にお姉さんを思っているとは言えませんのよ。人として大切にしてこそ、本当に親しいと言えるのではないですの?」
来夢は真剣な顔で美桜に向かって話した。
美桜は目をぱちくりさせている。
静まった廊下では、ひたすら時計の針がチクタクチクタクと細やかな音を立てて動いている。
沈黙の場が1分ほど続いたときだ。

「続いては天気予報です。」
と穏やかな声が聞こえてきた。
聞き覚えのない声だ。
その声は、みぞれのいる部屋の中から聞こえてくる。
ジーナは扉を開けて部屋の中をのぞきこんだ。
「ちょっ、ジーナさん! 入る時はノックしてくださいよ!」
とみぞれが両手を横に伸ばし、足を大きく横に開いている。
部屋の中が見えないようにバリアしているつもりなのだろう。
だが、ジーナは全て見えてしまっている。
みぞれの背が低いからだろう。
「お邪魔しま〜す。」
ジーナは靴を脱いで下駄箱にしまわず、ドカドカと部屋にあがっていった。
「ちょっちょっちょっ、ジーナさん、あなた、許可もらってからあがってくださいよぉ……。」
みぞれは慌てふためいているが、ジーナはお構いなしで部屋の真ん中に座った。
座ったと言っても、本当は大の字に寝っ転がったのだが。
ジーナは、むくりと体を起こした。
そして、部屋中を見渡してみた。
皎色の壁、キャラメルブラウンの壁枠がジーナの予想だったのだが、少し黒くくすんだ焦げ茶色の壁、黒くて汚れがハッキリとついている壁枠が視界に入った。
窓枠はかろうじてきれいに磨いてあるのだが、肝心の窓が汚れており、掃除がされていないことがはっきりとわかる。
おまけに、右下の端の方には蜘蛛の巣が張ってある。
「ねっ、ちょっとみぞれの耳貸して。」
ジーナは寄ってきたみぞれの耳に向かって息を吹きかけた。
⇒三十八話へ続きます!

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