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340.シャインシックス【小説スレ】
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41 :ダーク・ナイト
2023/02/25(土) 16:06:58

第三十九話 「怪しの山小屋 その7」

「可哀想だなんて思わない。」
感情が抜けたかのような瞳になり、美桜は声を低くして言った。
「覚えてらっしゃい。」
来夢はとてもすっきりした。
今まで曇っていた心の空が、からっと晴れた。
来夢はスキップ混じりで、二人がいる部屋の扉を開けた。
「お邪魔しま〜す。」
来夢は部屋の中を見て声が出なくなった。
いくらかみぞれの持ってきた小さなポシェットで隠されてはいるもの、隠されていない壁や床の汚れがなんとも気になるものだ。
ジーナは来夢の方を向いて、肩をすくめた。
「思うでしょう? この部屋……ハッキリ言っちゃってきたな」
来夢は、シーッと言い、人差し指を口に当てた。
ジーナは声を潜めた。
「汚くない? この部屋。」
みぞれは小さく首を縦に振った。
みぞれの2/8に分けられた前髪がブンブンと揺れる。
「おそらく、今は美桜さんしかこの山小屋を管理していないのでしょう……。あの方の性格からして、綺麗にするつもりはないのだと思いますわ。」
来夢はひそひそと二人に話した。
ジーナは言った。
「というか、お腹すいたのだけど……。」
同時に、みぞれのお腹が小さくキューと鳴った。
「実体映写は使えないですか?」
自分のお腹の音をかき消すようにみぞれが言った。
「そうね。」
ジーナは、やや古い匂いのする空気を一回吸い、
「実体映写!」
と言った。
ジーナは頭の中に、オムライスを思い浮かべた。
薄黄色でふわふわの卵。
つやつやの赤いケチャップ。
グリーンピースが混ざったオレンジ色のご飯。
次の瞬間、ポンッと音を立て、3つのオムライスが現れた。
銀色のスプーンも3つ現れた。
「ジーナさん、ありがとうございます! いただきます!」
みぞれが手を合わせた。
続けて来夢もいそいそと丸い机のそばについた。
ジーナは開けにくい押し入れから藍色の座布団を取り出し、机のそばに持っていった。
そして、座布団の上に座った。
「いただきます!」
ジーナと来夢の声が重なった。
二人は顔を見合わせてふふっと笑うと、目の前にあるオムライスにスプーンを突き刺した。
卵と卵の間から、温かい湯気が立ち昇ってきた。
同時に、ふわんとした香りが広がる。
⇒第四十話へ続きます!

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