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340.シャインシックス【小説スレ】
 ┗44

44 :ベリー
2023/03/16(木) 21:23:10

「ふぅかぁ! ふーかじゃないかぁっ」

 ジーナの言葉に返事をしたのは風香──ではなく、酔っ払ったおじさんだった。
 唐突に会話に割って入ってきたおじさんに驚いて、一同視線が一点に集中する。
 傍に居る女の子はオドオドしながらも説明を始めた。

「私達、琴平さんから食料を頂く約束をしていて。このご時世のこともあって家族は皆腹を空かせていて、そのせいでさっき弟達が“お腹空いた”と喧嘩してしまったんです。さっき、じいちゃんが酔っ払ってるのに“琴平さんから食料を貰ってくる”と言って飛び出してしまったんです。私はそれを追いかけて……。」

 山小屋周辺は豊かな自然に囲まれていて、シャインシックス一同が今まで食料に困らなかった程度には資源で溢れていた。
 琴平姉妹は定期的に街だった廃墟で暮らす人々にそれを配る、慈善活動をしているのであった。

 それらを察したシャインシックス一同は憂い顔を浮かべる。

「なら、私達と一緒に山小屋へ行きましょう。深夜の道端に居る女の子と酔っ払いを放ってはおけませんし、私達なら貴女方を守れますわ!」

 来夢がパンッと手を鳴らし言った。そうね、賛成、とジーナが笑ってガッツポーズ。

「そんな、皆さんに迷惑をかける訳には……」
「そんな事いいんです。助け合い、ですよ! 苦しい時は強がらず、人を頼ってください!」

 みぞれも賛成の様で、困惑の表情を見せる女の子に言った。
 おじさんは酔っ払っていて状況把握を出来ていないようだが、女の子はシャインシックスの言葉に目頭を熱くしていた。
 ジーナはポッケから取り出したティッシュを女の子に差し出し、「念力」と言い放つ。と、酔っ払ったおじさんがフワフワと浮かんだ。

「皆、行くわよ!」

 ジーナの掛け声と共に、皆は来た道を折り返し始めた。しかし、風香だけは戸惑ってその場に立ち尽くしていた。
(私は皆の仲間じゃない。寧ろ部外者なのに、一緒に行っていいのか──)

 ジーナが立ち止まり、振り向く。

「何やってるの風香。行くわよ?」

 さも風香も行くのが当たり前、とでも言うように言った。
 そのちょっとの傲慢さが、風香の緊張を解す。

「う、うん……!」

 自慢の足を使って皆に追いつく。
 風を感じる。
 深夜独特の──いや、明け方の冷たくも気持ちい空気が喉を駆け抜ける。
 熱い体を冷ましてくれる。
 追いつくだけだから、いつもより遅く走っているはずなのに。
 ──楽しい

 風香の口角が、自然と上がった。

 こうして、皆はゆっくりと山小屋へ目指して歩き始めた。

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