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┗351.ボーイガールライフ【小説スレ】(1-11/11)

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1 :ダーク・ナイト
2023/02/21(火) 14:53:48

この物語は、入れ替わってしまった男性の物語……
(小説は>>>352へ)

目次
登場人物紹介 >>10
第一話 「見違えた世界」>>2-9
第二話 「『私』の生活」
第三話 「迷いの行為」
第四話
第五話
第六話
第七話
第八話
第九話
第十話

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2 :ダーク・ナイト
2023/02/21(火) 15:07:32

第一話 「見違えた世界」

俺は、如月 陽斗(きさらぎ はると)。
勉強だけに自信がある小5の男子だ。
男子=運動神経抜群という古い考えをしていないだろうか。
俺は昔その古い考えを持った人に虐められたのだ。
それから人生が虚しくなり、勉強だけをして暮らしている。
学校に行くのも嫌になり、家にこもってひたすら机とにらめっこしているだけだ。
「サボり」なんて言葉は俺の脳の中には存在しない。
勉強だけが俺の励みだ。

つい最近までそう思っていた。
目の前は暗かった。
俺には明るい未来なんて無いのだと思っていた。

そう。
ついさっきまでは……。

気がつくと俺は目が覚めた。
なぜか病院のベッドに寝ていた。
おそらくいつもと寝心地が違って目が覚めたのだろう。
いつも机に突っ伏して寝ていたが、机よりも硬いじゃないか。
病院のベッドはもっと居心地が良いイメージがあったが……。
俺の身には一体なにが起きたのだ。
病院のベッドに寝ているということはなにか事故に巻き込まれたのかもしれない。
一旦体を起こした。
病院の先生を呼ぶためにナースコールを押そうと、腕を伸ばした時、うっとりするくらい細くて白い腕が視界に入った。
俺はギョッとした。
理解ができなかった。
頭が追いつかない。
コレは……漫画でよく見る転生という現象か?
ありえない話だったが、コレくらいしか思いつかなかった。
とりあえず先生を呼ぼう。
そう思い、手をナースコールに近づけたときだ。

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3 :ダーク・ナイト
2023/02/22(水) 18:04:04

「何してるのー?」
俺の耳に誰かが話しかけた。
俺はおそるおそる顔を声のする方へ向けた。
そこには、俺の顔がいた。
「え?」
鈴を転がすような俺の声が耳障りだ。
「あー、私だ。やっぱりね☆じゃ、頑張ってー!」
俺の顔をして俺の格好をした俺ではない人が扉を開けて廊下に出ようとした。
「待って!」
俺は…なんと言えばよいのだろう。俺の分身と呼ぶか。
俺は、俺の分身を呼び止めた。
俺の分身は振り向いた。
「あー、私? えー? 覚えてないの? 栗原 香帆(くりはら かほ)だよ!」
誰だそりゃ。
「待て、香帆? 香帆って誰だったっけ。」
「ますます、えー?なんだけど……。おっかしいなー。お母さんじゃん。」
「…………は?」
俺はやっとのことで一言を絞り出した。
母さん?
母さんは父さんと離婚して、栗原という名字に戻った。
俺は今は父さんと2人で暮らしている。
「母さんじゃん。なんでこんなに若いんだ? しかもなんで話し方……」
話し方が違う、と言おうとした時、母さんが話を切った。
「ハイハイ〜そこまで〜。私は、アンタのお母さん。」
「それは知ってる。」
「最後まで聞きましょう。」
「へい。」
なんだこの会話は。
知らない人が見たら絶対驚く。
「過去の香帆だよ。」
「え? え? は?」

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4 :ダーク・ナイト
2023/02/22(水) 18:42:37

「コレは、私の小5のときの姿かな☆」
母さんはくるっと一回ターンした。
その拍子で、身につけている赤紫色のちゃんちゃんこが揺れる。
母さんの細い男の体にはぶかぶかのちゃんちゃんこは合わない。
俺は慣れない高い声を響かせる。
「……母さんってこんな声を出していたんだ……。」
「そーよ☆なんか文句でも?」
「いや……出すの難しいなって。」
「そ~かな? 私は男声って出すの難しいなって思うけど。」
母さんは首をちょこんとかしげた。
そして、黒いボサボサの髪の毛を掻きむしった。
見た目は男、中身は小さい頃の母親というわけか。
母さんは病室にかけてある時計を見て言った。
「あ、もう時間じゃん。急がないと!」
「何の時間?」
と俺が聞くと、母さんは言った。
「通勤の時間じゃないの! 速く行かないと電車に遅れる!」
母さんは低い声でそう叫んだ。
低い声では叫びにくいだろう。

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5 :ダーク・ナイト
2023/02/22(水) 18:48:20

「待てよ。今は子供じゃん。通勤なんてする必要ない。」
「あぁ、そっか☆んー、でも見た目が変わっただけで仕事がなくなるわけじゃないんじゃ……。」
「それとさ、俺ずっと思ってたんだけど、なんで過去の母さんなのに記憶あるんだよ。」
「あー、それはね……なんか姿だけ過去になるというか。」
「適当だな……。」
「仕事はどーなるんだろ?」
「え…? じゃあ母さん通勤しないとじゃん。」
「ほらあぁ、やっぱりいぃ……。」
「いってら。」
「息子がヒドいいー。」
母さんはなげきながら扉を開けて廊下へ出ていった。
俺の心の中には、「息子」という言葉が残っていた。
息子…俺ってまだ母さんの中では息子なのかな。
そういえば、そうなると、俺の母さんじゃないから、母さんじゃなくて香帆って呼ぶことになるな……。
でも、香帆って呼ぶのは抵抗があるな……。
そんな考えを頭の中でめぐらせていた。

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6 :ダーク・ナイト
2023/02/22(水) 18:59:39

母さん……香帆……母さん……香帆……
俺の頭の中では、花占いのようなことが開始されていた。
静まり返った部屋の中では、時計の針だけがチク……タク……チク……タク……と規則的に動く音がする。
俺はチラッと時間を見た。
時計がココからでは見えないため、ベッドから飛び降りた。
男のときの体だと、決まってドシン!という鈍い音を立てるのだが、この体だと少し軽くなったような気がする。
俺は着地したところから二歩ほど下がり、時計を見上げた。
身長が低くなった気がする。
前までの視点と違う、新しい世界が見えた。
えー……と……眼鏡がないからよく見えない。
アレは12時か?1時か?
グ〜、と腹が鳴った。
「……売店にでも行くかぁ……。」
そうつぶやいたとき。
コンコン、と扉を叩く音がした。
俺は急いでベッドへ向かった。
途中で派手にずっこけて額を打ったことは秘密だ。
「入るよ〜。」
のんびりとした声がした。
まだノックされて返事がないのに入ってくるとは、常識があるのだろうか、とぶつくさ思った。
入ってきたのは老人だった。
腰は曲がり、髪の毛は白髪だ。
「ど〜も。この病院の院長の、白原 應仁(はくはら おうにん)だ〜よ。」
中国人なのだろうか。
日本語が少しなまっている気がする。
おまけに、名前からして日本人ではなさそうな名前だ。
ハクハツ ロウジンとか言ったっけな。
ハクハツ ロウジンはの〜んびりと話した。
あまりののんびりさにイライラしたほどだ。

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7 :ダーク・ナイト
2023/02/22(水) 20:53:08

「君はねぇ、入れ替わってしまったみたいなんだよぉ〜。君のお母さんとねぇ。なぜか君のお母さんが過去の姿なんだよねぇ。だから君の身長は低いんだよねぇ。ところでねぇ、君のお母さんから申し出があったんだけどぉ。」
ハクハツ ロウジンは白いひげをさすった。
そして、スローペースで俺に手鏡を差し出した。
そういえば今の俺の姿を見るのは初めてだな。と思いながら鏡を覗き込んだ。
そこには、見慣れない俺がうつっていた。
さらさらとした茶色の、腰まで伸びている髪の毛。
ブラックダイヤモンドのような色をした瞳。
薄紅色につやつやしている唇。
浅紅色の頬。
きりっと涼し気な眉毛。
抜けるように白い額。
今の俺の顔なのにまじまじと見入ってしまった。
母さんの小5の頃ってこんなに美人だったんだ。
……香帆って言ったほうが良かったのだろうか。
「ホホォ。君は美人さんが好きなのかねぇ。」
ハクハツ ロウジンがにこにことしている。
口角を上げることでさらにシワが増えたように見える。
別に、美人が好きだなんて思わない。
女子など、こいばななんてもので騒いで無駄におしゃれしているだけだ。
女子はそのようなイメージがあるため、「好き」という感情を抱いたことがない。
俺はふと気がついた。
この体だと女子として生きることになるのではないだろうか。
そうなると、こいばなをしたりおしゃれをしたりという生活を送ることになるだろう。
想像しただけで吐き気がした。
すると、横のハクハツ ロウジンが口を開いた。
「そういえばねぇ、君。今日には退院できそうだねぇ。」
ハクハツ ロウジンはにこやかにそう言うと、扉の方へ向かっていった。
「あ、あの!」
俺はハクハツ ロウジンを呼び止めた。
「何かね?」
「俺の体って戻りますか? それと、なんで入れ替わったんですか?」
俺は早口で聞いた。
とにかくすぐに答えをもらいたかった。
「君の体はねぇ……。戻るとしたらなにか特別な薬品を使わなければいけないんじゃないかねぇ……だが、しばらくはその体で暮らすしかないだろうねぇ。」
そんな……と俺は絶望で床にしゃがみこんだ。
もう俺の人生は真っ暗だ。
こんな女子の体で暮らしていけるわけがない。
俺の涙が白いスカートに滲む。
ハクハツ ロウジンは続けた。
「それとねぇ……入れ替わった原因はだねぇ……見かけた人から聞いたんだけども、どうやら君のお母さんとぶつかったらしくてねぇ……その時のお母さんが子供の頃を思い出していたからか、子供の姿で入れ替わっちゃったらしいんだねぇ……。」
「ねぇ」が多くてじれったかったが、聞きたいことが聞けたということにホッとした。
とりあえず、この体で暮らしていくしかないのか。
俺はそう思い直してベッドに横たわった。

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8 :ダーク・ナイト
2023/02/22(水) 21:06:55

ハクハツ ロウジンは、今度こそ扉の方へ向かっていった。
「ではぁ。なにかあったらナースコールを押すんだよぉ。」
そう言い残して、ハクハツ ロウジンは部屋から出ていった。
カチャン、と扉を閉める音がすると、俺はハーッとため息をついた。
そして、右の方に寝返りをうつ。
スカートが絡まって非常に邪魔だ。
着替えをしようと思ったが、無い。仕方がない。
俺は運ばれてココにいるのだ。
荷物などあるわけない。
旅館に泊まっているわけではあるまいし。

暇だ。
寝ているしかないだろう。
ココにはノートも参考書もテキストもない。
暇つぶしのゲームもないし、ポテチもないのだ。
なにかあったらナースコールを押せとは言われたが、暇だとは言えない。
だが、スカートが邪魔だ。
俺は病室のカーテンを締めた。
ドアには鍵をかけた。
そして、誰もいない空間でスカートを脱いだ。
今は冬。
下になにも履いていなかったら寒い。
とりあえず毛布で補おう。
スースーする足に、少しゴワゴワしている毛布を絡めてベッドの上に寝っ転がった。

俺がうとうとしかけたときだ。
ガチャッ、ガチャッという嫌に乱暴な音がする。
母さ…香帆が帰ってきたのだろうか。
俺は鍵を開けに行った。
「ほい。あ、母さんおかえりー。」
どうしても口では母さんと言ってしまう。
「おかえり〜って、キャー! なにアンタスカート脱いでんの!」
男声で女子の言葉を話すとこんなにも違和感があるのか。
俺は女声で男子の言葉を話しているが、女子にも普通に一人称が俺の人は数人いるため、あまり違和感がない。
それはそうとして、問題はスカートだ。
脱いだっきりでうっかり鍵を開けてしまった。
「へいへい。今履きますよ。」
「早く履いてよ!」
香帆はあちらを向いて両手で目を押さえている。
別の方向を向いているのであれば、見えないはずなのだが。
「履けた。」
俺の言葉に、香帆がこちらを向いた。
「キャー!」
二度目の「キャー!」が上がった。
女子はすぐに騒ぐから困る。

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9 :ダーク・ナイト
2023/02/22(水) 21:24:52

「どした?」
俺は香帆に聞いた。
香帆は目を隠しながら必死に言った。
「スカート裏返し!」
「あ、すまんすまん。」
「もー!」
香帆は顔を赤らめながらあちらを向いている。
本当に女子はわからない。
俺は足を穴に突っ込んだ。
なんだか違和感がある。
「何してるの、速くして!」
香帆が叫んでいる。
ようやく、違和感の理由がわかった。
入れる足が逆だったのだ。
本来ならば左足が入っているはずの穴に右足が入り、右足が入っているはずの穴に左足が入っていた。
俺は歩きにくくて床に転んでしまった。
ひんやりとした床に肌が当たる。
すったところがヒリヒリと痛む。
俺はようやくスカートを履くことに成功した。
「で。」
俺は話を切り出した。
「どうだった? その格好での仕事は。」
「勘弁してよー。」
香帆はベッドに突っ伏した。
「社員のみんなには変態だの何だの言われるし、背が低くて作業がしにくいし……。」
「ふーん。」
「ふーんじゃないよおおお! アンタもその格好で学校に通ったら不便だと思うわよ!」
「え、まさかだけどさ。」
「うん。」
俺は、俺の思っていることと香帆が思っていることがあっているかどうか確かめようとした。
「えーとつまり、コレで学校に行く……と。」
「そ〜だね☆」
「ふざけるんじゃない!」
「ふざけてない。本気。」
俺は肩をすくめた。
冗談じゃない。
ただでさえ虐められていたのにもっと虐められるじゃないか。
「お互い頑張ろ☆」
俺は気乗りしないが、
「あぁ……。」
とぼそっとつぶやいた。

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10 :ダーク・ナイト
2023/02/23(木) 16:28:55

・如月 陽斗(きさらぎ はると)
この物語の主人公。
勉強ガチ勢の小5男子。
ひょんなことから母の若い頃と入れ替わった。
如月 波瑠(きさらぎ はる)として生活することになる。
かなりの面倒くさがり。
一人称は、俺。

・如月 波瑠(きさらぎ はる)
如月 陽斗と同一人物。
陽斗が女子の姿で学校に行くことを嫌がったため、名前を変更して通うことになる。
一人称は、私。

・栗原 香帆(くりはら かほ)
陽斗の母。
陽斗と入れ替わった。
若い頃はかなりの美人であった。
今も口調は若いまま。
ポジティブで何かと騒がしい話し方をする。
一人称は、私。

・白原 應仁(はくはら おうにん)
陽斗が運ばれた病院の院長。
「ねぇ」が語尾。
陽斗は心の中で、「ハクハツ ロウジン」と呼んでいる。
一人称は、わし。

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11 :ダーク・ナイト
2023/02/23(木) 16:51:26

ブロロロロロ……とエンジン音が唸るように鳴っている。
俺は、エメラルドグリーンのTシャツと白いマキシ丈スカートに身を包み、タクシーの席にちょこんと座っていた。
香帆が想像していた若い頃の姿が夏の格好だったらしく、冬なのに寒すぎる格好だ。
一方、香帆はぶかぶかの、赤紫色のちゃんちゃんこをはおり、黒いズボンと白いパーカーを着ている。
俺が赤紫色のちゃんちゃんこを着て外を歩いていたことについては幸い問い詰められなかったため、一安心していた。
俺と香帆は、タクシーに乗って家まで行くつもりだ。
父さんは俺が病院に運ばれたことを知っているが、様子を見に来ることはしなかったらしい。
息子が母親と入れ替わっても、仕事を優先する父親に半分呆れていたが、入れ替わりの姿をなんとなく見られたくはなかったため、半分ホッとした。
父さんは夜遅くに帰ってくるため、香帆はしばらく家にいることができるだろう。

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10 :ダーク・ナイト
2023/02/23(木) 16:28:55

・如月 陽斗(きさらぎ はると)
この物語の主人公。
勉強ガチ勢の小5男子。
ひょんなことから母の若い頃と入れ替わった。
如月 波瑠(きさらぎ はる)として生活することになる。
かなりの面倒くさがり。
一人称は、俺。

・如月 波瑠(きさらぎ はる)
如月 陽斗と同一人物。
陽斗が女子の姿で学校に行くことを嫌がったため、名前を変更して通うことになる。
一人称は、私。

・栗原 香帆(くりはら かほ)
陽斗の母。
陽斗と入れ替わった。
若い頃はかなりの美人であった。
今も口調は若いまま。
ポジティブで何かと騒がしい話し方をする。
一人称は、私。

・白原 應仁(はくはら おうにん)
陽斗が運ばれた病院の院長。
「ねぇ」が語尾。
陽斗は心の中で、「ハクハツ ロウジン」と呼んでいる。
一人称は、わし。