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363.映画総合スレッド
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400 :げらっち
2024/12/17(火) 22:30:41
21 意識の下の映像
序盤はこれでもかというくらいにテンポが良い。
まず犯人と被害者の関係だが、良い意味で「いつも通り過ぎ」、詳しい説明は省くという大胆な省略がされている(「殉教者は死なねばならんよ」「じゃあ殺すか?」に全てが込められている)。
コロンボシリーズの犯人は何のためらいもなく殺人を犯す者がほとんどだが、今回は特に犯行がスムーズ。殺しも3回目ともなると慣れた物なのだろうか。
コロンボが犯人に近付く描写もかなりラフ。これはロバート・カルプが3回目の登場=コロンボと犯人は既に知れた関係、というメタ的な省略にも見えてしまう。
以上のように前半はスマートだが、後半になるにつれ知的対決が加熱し、前作と同じかそれ以上に「しつこい」コロンボ戦法を楽しむことができる。
シリーズ中でも一番くらいに犯人と一緒に居た時間が長かった気がする。
対決回数は驚異の7回!スーパー、車中、ゴルフ場、と場所を変え対決していくのは飽きさせない。そもそもスーパーのような庶民的な施設が出ること自体がシリーズでは珍しい気がする(大体上流階級社会が舞台なので)。
また、今作は今までの作品の多くからコロンボらしい要素を凝縮している。そのためか「いかにもコロンボ」というような内容になっている。
【過去作要素の例】
犯人が被害者に対し不法行為を働き、それを告発されそうになったから殺すという動機→『指輪の爪あと』
犯人が大きな会社のボス→『指輪の爪あと』
被害者の妻が反抗計画に利用される→『アリバイのダイヤル』
犯人に近しい女性(バブコック嬢、タニア)が居るが、犯人によって遠くに追いやられている→『アリバイのダイヤル』
第三者が犯人に目星を付け、金を要求し、口封じのために殺される→『構想の死角』
犯人が凶器を大胆にも陳列している→『ホリスター将軍のコレクション』
犯人を犯人と仮定した、スレスレの話法→『黒のエチュード』
犯人の冷静さが手がかりとなる→『溶ける糸』
最終的にはたった1つの物的証拠が決め手となる→『溶ける糸』
そもそも犯人が、コロンボの犯人像のパイオニアであるロバート・カルプなのだからコロンボらしくなるのは当然と言える(『魔術師の幻想』といい、ロバートやジャックの3度目の出演はサービスシーン旺盛な回になっている)。
犯人の名前も「バート・ケプル」と、役者の名前をもじったものになっている。
終盤、コロンボが一度だけ「ケルプ」と呼んじゃっているが、視聴者サービスなのかただのミスなのかは不明(原語版ではちゃんとケプルとなっているので、恐らく日本語版のただのミス)。
後半の、コロンボが犯人の手を、犯人がコロンボの腹の内を互いに読んでいく応報がかなり面白い。これはコロンボとカルプという、「知れた仲」だからこそできたことだろう。
コロンボはケプルが犯人だと知っており、ケプルもコロンボが自身を犯人だと見抜いていると知っていながら、決定的証拠が無いために互いにギリギリまで手札を晒して攻防していくのだ。それを踏まえると車中やゴルフ場でのセリフのやり取りは、ニヤケが止まらなくなるくらいに面白いだろう。
一方で、今回の主軸となる「サブリミナルによる潜在意識操作」は同じシーズンの『毒のある花』や『愛情の計算』と並び少々SFチック。アイデアは面白いが、無理があると言わざるを得ない。
犯人は口径変換装置(そんなんあるの?)を処分した方が良かっただろうし、コロンボも、あそこまで隠し場所の目星が付いているなら家宅捜索の令状を取った方が早いし、そもそもサブリミナルで水を飲ませるならともかく、凶器を取りに行かせるなどという効果が出るとは思えないのだ。
今作は対決こそが醍醐味であり、ラストはオマケのように思える。
実は今作の脚本家は「コロンボシリーズの大ファン」だったそうで、だからこそシリーズの諸作に敬意を払った今作が生まれたのだろう。
今作は「上質な二次創作」にさえ近い。
コロンボ初心者が見ても満足でき、コロンボ玄人が見ると更に唸ってしまうという、佳作中の佳作と見ることができる。
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