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501 :げらっち
2025/04/30(水) 13:09:38

34 仮面の男
パトリック・パクグーハンの趣味が炸裂してしまった回。
恐らくは彼の、スパイを演じたいという欲求、スパイとコロンボを絡ませてみたいという願望を、素直に形にしたのがこの回なのだろう。独特で印象に残るシーンが多い一方、少々他の話から浮いている感じはぬぐえなかった。
前回の外交官、次回の闘牛士、次々回の魔術師と比べても、今回は「その職業(スパイ)である必然性の無い」犯行なのである。
スパイなら人1人消すくらいいくらでもやり方があるだろうに、どうしてあんなに原始的なのか…

スパイの描き方も、摩訶不思議。何でみんな、あんなに目立ってるの?
2種の遊園地のシーンは他の回では見られないような魅力はあるが、スパイが密会の場所として選ぶには違和感のあるチョイスである。実際、写真撮られちゃってるし。スパイは遊園地好き!?

スタインメッツという架空の人物の存在も、謎である。
殺人のために用意したにしては大掛かり過ぎるし、そうであれば実際の犯行の不用意さがかえって目立つ…
メルビル爆破もよくわからない。殺すならまだしも、半殺しにしたんでは不利な証言をされてしまうだろうに。メルビルに罪をなすり付けたいのか、スタインメッツを犯人にし煙に巻きたいのか…狙いがいまいち見えてこない。

コロンボが接待を受けるシーンは『祝砲の挽歌』の延長線上にあると取れなくもない。が、何故かせっかく開けて貰ったワインに手を付けず、葉巻もほぼ吸わないコロンボ…何で?

これらの意図を探るならば、「マクグーハンが描きたかったものを数珠つなぎにした」というのが正解かもしれない。要するにシーンの集合体であり、全体的な整合性は二の次、というワケ。

CIA部長との密会、屋敷での接待、と「謎のシーン」を挟みつつ、解決は意外にも「いつも通り」。すなわち、犯人のトリックのぼろを見抜くという、前作や次作と違いオーソドックスなコロンボ風なのダ。
しかしそのアリバイトリックも、自由に動かせる時計では何のアリバイにもなっていない、という問題点はある…
手札を交互に出していくのは、ラストでもそう言っているように「勝負事」風であり、世界情勢が決まり手となるのも諜報部員らしい面白さではあるのだが。
また、時計の鐘がキーワードになるのは、同じくアリバイ崩しを決まり手とした『アリバイのダイヤル』を意識しているようにも思われる。アリバイ崩しが直接逮捕に結びついたのは、全作でもこの2作限りである。

ちなみにこれらのずさん要素は、
「高い地位を持ちながら、単身、原始的な犯行」→『完全犯罪の誤算』
「自由に動かせる時計でのアリバイトリック」→『復讐を抱いて眠れ』
と、何故か新シリーズのマクグーハン物に引き継がれちゃっている。どうして~?

ちなみに、「闇夜に2人が密会し、車に関連する犯行があり、クラクションが鳴り響く」というのは、前作でも全く同じシーンがあった!!
このように似たシーンが隣り合った回で見られるのは、
「入院中の患者に対し薬品を仕込む」→『溶ける糸』と『絶たれた音』
「ラスト、犯人が、ドラマの中核にあった大事な物を海に投げ捨てる」→『毒のある花』と『別れのワイン』
がある。
しかし今回は演出まで似ており、マネしたの?と素朴に疑問に思った。

さて色々書いたが、CIAにあれほど妨害されながらも、ただひたすら「目の前の殺人を解決しようとするコロンボ」はカッコ良かった。
つまりコロンボは犯人を逮捕さえできれば、犯人が逮捕されたことで国際情勢で不利益が生まれようと、お構いなしなのである。何故かというと、コロンボシリーズは犯人逮捕の瞬間にドラマが終わるからである。

前作と今作、2作続けて「警察を超えるような権力を濫用する犯人との対決」シリーズだった。

マクグーハン筆頭に、レスリー・ニールセン、ヴァル・アヴェリー、ヴィト・スコッティ、ブルース・カービィと、演者が豪華な回でもあった。
クレイマー刑事、コロンボと対照的に真面目でせっかち…
彼は途中からばったり出なくなってしまうが、前半の、犯人と被害者の足取りを辿る、珍しい「通常捜査」を描くために駆り出された、と考えれば納得できる(大抵の回ではコロンボが瞬時に犯人を見抜くため、通常捜査は行われないことが多い)。

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