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512 :げらっち
2025/05/21(水) 11:22:58

36 魔術師の幻想
魔術師というと奇抜だが、マジシャンなので、前3作よりは庶民的。
マジシャン役がこの上なく似合うジャック・キャシディ3度目の登場や、待望のウィルソン刑事再登場など、ファンサービス色の濃い作品になっている。
しかも単なるサービスではなく、マジシャンという職業やウィルソン刑事の存在に、しっかり必然性があったのも良いところ。

ジャック・キャシディと魔術師という取り合わせは、神。
華やかだがどこか胡散臭く、一見すると紳士的だが、自尊心が高く、虚栄心に満ちている…という役どころは、いつも通り。そしてまたも女たらし。女性を口説くシーンなど、お約束のサービスシーンに思える。
今作はジャックが火を扱うシーンが多いが、実はジャックはこの撮影の直後、火事に遭い焼死している…つまり今作は遺作となってしまった。
それを踏まえて見ると、最後のジャック退場シーンは切なく、あの写真は遺影に見えてくる…()

お待たせ!ウィルソン刑事再登場は本当に嬉しかった。
絶妙な張り合いを見せた『悪の温室』の時と違い、今作では名コンビになっている。この2人の捜査をもっと見たかった…
ウィルソンと話す時のコロンボは敏腕刑事風で、早口。やはり犯人に対する「じらし」は戦法だったようだ。
ワードセンスも冴えていたと思う。
性格がよくわからないクレイマー刑事よりも、この2人のタッグがもっと見たかった…
ちなみに今作もクレイマーで成り立たないことも無かったが、クレイマーは緩慢なコロンボに対しせっかちなキャラ。今作のコロンボはいつもと比べきびきび動くため、ウィルソンの方がマッチしていたのだ。


実は、ミステリ的には、そこまで凝ってない。
マイクを使ってのアリバイトリックはそれ自体面白い物ではないし、タイプライターの履歴という決まり手は、明らかなマイナス点。
だがそんなミステリ的弱さを感じさせないのが、随所にちりばめられたマジックによる演出。犯行の方法、アリバイトリック、犯人との対決、ウィルソンとの掛け合い、ささいな聞き込み捜査(ギロチンは『汚れた超能力』で使われます)、そしてラスト、全てにマジックを絡ませることにより、華やかで退屈のしない90分に仕上がっていた。

「犯人と被害者の対決」がシンプルなのも良かった。
こんなにシンプルな男の対決は『死の方程式』、『パイルD-3の壁』、『意識の下の映像』、『自縛の紐』、そして今作くらいか。
これらの被害者には、今作のジェローム以外、「犯人には殺されるほど憎まれているが、妻には愛されている」という共通点があった。
また、意識の下の映像のノリス、自縛の紐のスタッフォード、今作のジェロームは、そろって高級料理を美味そうに食べている(食べながら犯人に憎まれ口を叩く)という共通点もあった。意外に憎めないオヤジたちなのだ。ていうか、犯人の方が人格破綻しているケースが多い。
コロンボシリーズの殺人動機は「金目当て」or「邪魔者の抹殺」というシンプルな物の方が、対決に集中できるから面白い。
新シリーズでは『完全犯罪の誤算』、『犯罪警報』などがそれに当たるが、複雑な対決構図が増えた結果、シンプルな面白味は消えていった…

ちなみに今作と前作は、珍しく犯人の実子(娘)が登場していた。
しかし『愛情の計算』の時と違い、子の登場に必要性が無かった。今作のサンティーニは愛情の見当たらない男だったので特に…

ジャック登場3回目といえばだが、前2回の登場時の要素も見られた。
『構想の死角』要素…殺人を特定の誰かになすり付けるのではなく、「プロの仕業」に見せかける。『第三の終章』では本当にプロの殺し屋が出たけど…
『第三の終章』要素…「鍵」が鍵になる。本来なら開けられるはずの無い鍵を犯人が開けた、というところが着眼点になる。「ビューティフル!」という独特の言い回し。

ファンサービスといえばだが、
この次の作品『さらば提督』は最終回のつもりで用意されていたらしいし、今作は最終回の1話前という事で、カーテンコール的作品のつもりで作られたのではないか。
そう考えるとジャック・キャシディ、ウィルソン刑事、マイケル・ラリー、犬、コロンボのコート、とお馴染みの要素がそろって顔を出したのもうなずける(チリは『自縛の紐』の断食以降1回も出ないけど…)。
マイケル・ラリーがあんなに喋るのは、36回目の登場にして初めてだった。

小ネタ。
サンティーニの偽名が原語版では「マーサ・ワシントン(大統領の妻)」だが、日本語版では「ジョージ・ワシントン」となっている。日本人にはマーサは馴染みがないという事で、こうしたのだろうか。
コロンボの「ハッ!」「ホッ!」という謎のセリフがある。

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