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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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102 :げらっち
2024/05/11(土) 10:06:46

第10話 イロ違い


 高級ホテルの一室、若しくは、豪華客船の一等船室のような、この部屋が寮の一室とは、誰も思うまい。
 成績の悪い、下賤な家の生まれの「落ちこぼれ」共の暮らす、小汚い寮とは大違いだ。
 エリートクラス首席たるもの、言葉は真の意味を知って使わねばならない。寮という単語には、寄宿舎という意味の他に、役人の住む建物という意味もあるらしい。であれば後者の意味で、ここは寮と言える。
 何しろ僕の父上は、ニッポンジャーの隊長であり、戦隊の嚆矢であり、ここ戦隊学園の理事長も務めておられるのだからな。


《天堂茂》


「先輩方、そう身構えずに。僕はただの《後輩》だ」

 僕の暮らす寮は御屋敷のようで、馬鹿な生徒共が共同で使う棟よりも遥かに広い。学園西部の森の中にあり、専用の送迎車が出ていて、他の者は建物の在処さえ知らない。
 ところが今日は、僕は上級生共を招聘した。首席と呼ばれる、各クラスで最も成績・実績の優れた生徒たちだ。多くの者が3年だ。
 上級生共はこのような特注の寮の存在すら知らなかったと見えて、そわそわと居心地悪そうにしていた。何年も在籍していて学園内を把握できていないとは、たかが知れているな。

「先輩方、もっと寛いで下さいよ。ささ、お召し上がり下さい。僕からの気持ちです」

 上級生共は「頂きます」などと口々に言って、目の前の御馳走に手を付け始めた。トリュフの乗った、本物の牛肉のステーキ。垂涎の品々だ。ずらりと並ぶナイフとフォーク、どの順番で使うかも知らないのか。育ちの悪さが伺えるな。
 大きな長方形のテーブル。王座にどっしりと構えているのがこの僕だ。足を組んで、悠々と上級生共を見回してやった。
 上級生共は6人。忍術・機械クラスを除く全首席が一堂に会している。
 忍術クラス首席のソウサクブラウンは、学費横領を働き無期停学となった。学園の恥晒しだ。次期首席は決めかねているらしい。機械クラス首席の「あいつ」は、巨大ロボ制作で忙しいようだ。

 僕はエリートクラスの首席だ。
 1年生にして首席に抜擢されるのは、栄えある事だ。エリート中のエリートである僕だからできる事だ。それも9クラスの中で最も格の高い、エリートクラスの首席だ。
 父上も大層お喜びになった。鼻が高い。
 あの小豆沢七海なんかには、100万年かかっても無理な話だろうな。

 さて、本題に入る。

 僕はさりげないというふうに言った。

「このザマは一体どういうことですか?」

 元々和やかでは無かった空気が、更にピリッと張り詰めた。
 上級生共は咀嚼を中断し、一斉に僕を見た。僕は最初の言葉が場に浸透・定着するのを待ち、敢えてゆっくりと時間をかけて、次の言葉を提示した。

「コボレンジャーは初戦敗退する、僕はそう《予想》したはずですよね?」

 んぐっと、誰かが食物の塊を呑み込む音がした。
 カチカチと、時計の針が進む音だけがやけに響いているではないか。どうした木偶の坊共。お前たちが黙っている間に、僕の思案はどこまでも先に行くぞ。

「すまない」
 最初に発言したのは、武芸クラスの首席、湯河原刃(ゆがわらやいば)。
「ホームランジャーは武芸クラスの恥晒しだよ。そもそも、スポーツ系戦隊を武芸クラスに所属させるのが無理があるんだよ! 真に部芸を極めた私が、コボレンジャーを鍛え直してやる!!」
 彼女は八重歯を剥き出しにして怒鳴った。前髪はぱっつん、後ろ髪は括って垂らしている。いつもはジャージでも着ているのか、ブレザー姿は居心地が悪そうだ。女性にしては長身で引き締まった体格だが、武芸十八般を極めた学園屈指の武闘派とは本当かな?

 すると湯河原の隣の男が言った。
「武芸クラスは軟弱だ。武器が無いと戦えんのか? 力士は体1つが武器になる。俺たちが待ったなしでコボレンジャーをかわいがってやる」
 椅子からはみ出さんばかりの巨体を赤い着物で包んだ、大銀杏を結った力の戦士。赤鵬楼太郎(せきほうろうたろう)。格闘クラスの番付の頂点だ。
 彼は残っている御馳走をガツガツと平らげた。
「ごっつぁんです」

「舐めんなよ!!」
 と湯河原。
「下の者をいじめ上の者にへつらう風潮、八百長で腐敗した、日本の悪い伝統だけを受け継いだ保守的な角界に制裁を!!」
「のわぁんだと!!」
 湯河原と赤鵬は席を立ち、睨み合って、変身した。

「ヨコヅナレッド!!」
「トルネマゼンタ!!」

 赤いふんどしを付けた巨体、ヨコヅナレッドはどっしり構える。それに対し、竜巻のように攻撃的なトルネマゼンタ。ピンクが代表では締まらないからか、赤に近い「マゼンタ」を名乗っているが、実際はその色はピンクに近い。

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