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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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108 :げらっち
2024/05/11(土) 10:31:56

《天堂茂》


 僕が所属するのは、学年の生徒のうち上位1割のみが入ることのできる、エリートクラスだ。
 遅刻など論外だ。僕は今日も授業開始15分前には教室に到着し、自習を始めていた。
 授業開始30秒前に慌てて教室に入って来る生徒も見受けられたが、そんな奴らがエリートクラスに居ていいわけが無い。後で父上に言って、他クラスに格下げさせてやろう。そうだな、俗物の集まる魔法クラスなんかがいいだろう。

 エリートクラスの教室には最新式のパソコンが並んでいる。
 1戦隊につき1台このパソコンを使い、軍事シミュレーションに打ち込むというのが、主な授業内容だ。
 僕は今日もゲーミングチェアに腰掛け、キーボードとマウスで画面の中の戦隊を動かす。背後からエリートファイブの連中が画面を覗き込んでいる。
 セオリー通り。僕は相手の戦隊を叩き潰す。WINの表示。相手が投了した。完膚無きまで叩き潰してやるつもりだったが、相手にならんな。
 後ろからエリートファイブの連中が持て囃した。
「すごいです! 今日の戦術も冴えてましたね! これで49連勝ですね! 50勝まであと1勝!!」
「エリートファイブに勝てる戦隊なんて居ないんじゃないですか? これも全部茂さんのお陰ですよ!」

 僕の向かいでパソコンを使っていた対戦相手の戦隊、文具戦隊モノレンジャーは涙ぐんでいた。
「ちっくしょ……次は負けないからな……」

「次だと? 実戦に次は無いし、この僕がお前らのような雑魚をもう一度相手にするわけが無いだろう? 僕は無能な暇人ではないのだからな。お前らは確かテストでギリギリ100位に入り何とかエリートクラスに入れたのだよな? お前らにエリートの肩書きは荷が重い。もうクラスを替えるか、退学したらどうだ?」

 モノレンジャーはマウスをガンッと叩いた。
 言い返せないからといって八つ当たりとはレベルの低い。

「ほ、本当に凄いんですねえ、茂クンは」
 エリートクラスの担任、世川秀秋が揉み手をしながら近寄ってきた。
 痩身でスーツを着ており、眼鏡を掛け、頭髪は少し薄くなっている。元々父上の部下だったこの男は僕の言いなりになっている。
「き、きっと将来は立派な司令官になれますよ、はい。お父様もお喜びになるはずです、はい」

 前線に出る戦士など駒だ。その駒を動かす司令官に、僕はなるというわけだ。

 僕は椅子をくるっと回転させ、立ち上がった。
「どこに行くんですか? 茂さん」
「つまらん。このクラスに居る奴らなど相手をしていても無駄だ」

 僕は廊下に出た。
 僕は昨日の晩餐で、全クラスに向け、「小豆沢七海を潰せ」という通達を出した。そろそろ成果が出た頃だろうか?
 すると足音を立てながら、大柄な男がこちらに向かってきた。廊下を走るとはマナーがなっていないな。
「坊ちゃ~ん!!」
 土だらけのジャージを着たいかつい男だ。走るなり土が廊下に飛散した。コイツは確か魔法クラス2年・古文書戦隊ブンメイジャーのブンメイブルーこと河野(こうの)インダスだ。僕は記憶力が良いので覚えている。
「何の用ですかね、先輩? まさか小豆沢七海を潰せたのか?」
 インダスは土だらけの軍手で額の汗を拭いたので、額に土が付いた。
「違うダス。でも朗報ダスよ!! 古文書を解読した所、学園の地下に《入れ替わりの石像》があるということがわかったダス……」
「石像だと?」
「入れ替わりの石像は、人のカラーを入れ替えることができるとされる伝説の秘宝ダス。見つかれば大変な功績ダス。その歴史的瞬間に、坊ちゃんにも立ち会ってほしくて」

 何をのぼせたことを言ってやがる。
 僕が今気になっていることは1つだけだ。

「入れ替わりの石像があれば、坊ちゃんの掲げるコボレンジャー討伐にも役立つかもしれないダスよ」
「ほう……?」

 僕が気になっていることは、小豆沢七海を倒すことだけだ。

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