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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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11 :げらっち
2024/05/01(水) 13:12:05
戦隊への変身、それは真っ白い私を色付けしてくれるもの、そう願っていた。
でも私のイロは白だった。色も、イロも、白……
「私は、真っ白のまま……」
「七海ちゃん!」
楓が両手を、私の両肩にポンと置いた。
「白もめちゃいい色じゃん!!」
「え?」
「ねぇ見て。ここにはいろんな色の人がいるけど、同じ色の人は1人も居ないよ。同じ赤でも濃いのも薄いのもあるし、無限のグラデがある。白もその1つだよ!! あたしは七海ちゃんの白が、大好き!」
マスクには目を囲うように透明のゴーグルが付けられている。その下からくりくりした楓の目が見つめてくる。
私はその目を、睨み付けてやった。
「気休めはやめてよ楓」
私は彼女の手を振り払った。
「白なんて大嫌い。じゃああなたが白になってみれば? 根本的な解決にならない自己満の持論を、どうも有難う。あなたの配慮もセンスも無い同情で、私のみじめな人生も、1ミリくらいは報われたかな」
「は?」
楓の目が、信じられないというふうに見開いた。
「何なの? きも! ムカつく!! じゃあ知らん! 勝手にくよくよしてれば??」
こんなことを言うのは私だって本意ではない。
でも私の心は凍り付いて、トゲトゲで。ちょっとやそっとじゃ溶かせない。
こんな学園に入ってもカラフルになんてなれないし、友達もできない。結局私は白いまま。独りぼっちのまま。私の日記は過去も未来もずっと白紙だ。
楓は腕を組んで、黙ってそっぽを向いてしまった。
「COOL DOWN。落ち着け」
先生が言った。教室全体が、ミュートしたように、静まった。
「みんな、初の変身おめでとう♪ それがきみたちの、戦士としての姿だ。最初は皆カラーこそ違えど、同じようなシンプルな外見だろう。心技体を磨いていくことによって装備が変化し、世界でただ1人の戦士と成れる」
先生は真っ赤な戦士に成っていた。
それも生徒たちとは違い個性的だ。ポンチョのような独特な衣装となっており、ベルトの部分にはGというマークがあった。
「変身するとパワーがみなぎるだろう? それがきみたちの、真の実力だ。教室では窮屈だろう。校庭に出よう! おやおや、ちょうどよく晴れたじゃないか♪」
先生は窓の外を指さした。
私は窓のほうを見た。さっきまで薄曇りだった空が、晴れている。射し込む陽光で、視界が白く霞んだ。
「っ!」
まぶしい。
見えない。
私の身体は、色素が、メラニンが欠如している。日差しの下に出るのは、防寒着も無しに素っ裸で南極を歩くようなものだ。
白い肌は太陽光を浴びると激痛が走り、やけどを負ったように発赤し、ただれてしまう。
青い瞳は遮光性が少なく、アルビノでない人なら耐えられる程度の光でも眩しく感じる。
晴れの日にお散歩に行くこともできない。青空を眺めることもできない。
先生は「ついて来い!」と言うと、子供のように先陣を切って、廊下に走った。
生徒たちも浮かれて、我先にと続く。楓は私に目もくれずに行ってしまった。1000ものペアルックが私の前を通り過ぎ廊下に出て行ったが、白い戦士は1人も居なかった。
天堂茂がしんがりとなって言った。
「お前は来ないのか? 小豆沢七海」
私は、席に座って、うつむいていた。
「行きたくない」
「ほう、そうかい!! 時間の問題とは思っていたがもう落伍したのか。まあ知り合えたのも何かの縁だ。退学届の書き方くらい教えてやってもいいぞ」
天堂茂は笑いながら、とどめを刺すかのようにわざわざ電気を消して出て行った。
喧騒も熱気も去って、私は薄暗い教室で、1人ぽっちになった。
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