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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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112 :げらっち
2024/05/11(土) 10:42:46
《天堂茂》
僕は薄暗い穴の中に居た。
「河野先輩! 一体いつになったら見つかるんですかね?」
僕は上級生相手でもお構いなしに声を荒げた。
穴の奥から、大柄な青い戦士が這ってきた。ブンメイブルーだ。まるで巨大なモグラが近付いてきたかのようで気味が悪い。頭にはライトが装備されており、周りを照らしている。
青い戦士はしゃがれ声で言った。
「坊ちゃん。《入れ替わりの石像》はもうすぐ見つかるはずダス。古文書に寄ればこの近くにあるんダス……」
ブンメイジャー及び穴掘り戦隊ドリレンジャーが学園の南東の地下を掘削していて、僕は昼からずっと、この居心地の悪い穴ぐらに居る。
ブレザーもYシャツもきちんと結んだ赤いネクタイも、土で汚れてしまった。
穴の中は蒸し暑く、ガガガガと、巨大工機ドリレンオーが穴を掘る音が響いており、耳がいかれそうだ。
「先輩!! 僕はちょっと上に出て休憩していますからね!! もしも万分の一の確率で宝が見つかった時は報告して下さいよ!!」
大声でそう言うも、騒音が声を打ち消したのか、返答は無かった。
僕は1人、穴の中を出口に向けて進んだ。
穴は蟻の巣のように張り巡らされている。
一刻も早く、この鼓膜をビリビリに引き裂くようなうるさい空間から脱したいものだ。耳を塞ぎ、屈んで足早に移動する。
しばらく進むと、音がしなくなった。
助かった。
ホッと一息つく。
しかし。
「……ここはどこだ?」
まさか、な。
エリートであるこの僕が道に迷うなんてことは、無いよな。
「大丈夫だ。ここを進むと外に出られるはずだ」
だがいくら歩いても歩いても、地上の光りは見えない。
Gフォンのライトを唯一の光源とし、這って進む。
「河野先輩!! ドリレンジャーの奴ら!! おい! 聞こえたらただちに返事をしろ!!」
僕の声は僕以外の耳には吸収されずに、穴の中を彷徨って、暗闇に少しずつ消えた。
静寂は孤独の証。あのドリレンオーの爆音さえも懐かしい。
嫌な予感がする。
「オイ!! フザけるな返事をしろ! 僕の父上はニッポンジャーの隊長・天堂任三郎だぞ!! 返事をしないと父上に言い付けるぞ!!」
こんな地下までは、父上も助けに来ない。
僕は必死に穴の中を這いずり回った。見ると、手のひらが真っ黒に汚れていた。何でエリートである僕がこんな目に遭わなきゃいけないんだ。くそぅ、くそぅ、くそぅ……
はっ。
息が、苦しい。
最悪の考えが頭をよぎる。
恐竜の化石のように、白骨になって、ブンメイジャーに発掘されて、古代人の遺骨が見つかった、新発見だと、喜ばれるという考えだ。普段の僕なら思い付きもしないような、稚拙な空想が、僕が追い詰められていると物語る。
「い、いやだ! こんなところで死ぬなんていやだあああああああああああ!!!!」
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