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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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114 :げらっち
2024/05/11(土) 10:44:51
《七海 ?》
「おーい、大丈夫か!?」
男の人の、しゃがれ声がする。
なんだっけか、よく覚えていない。
確か公一とサイクリングしてて、事故で自転車から落ちて、そのまま穴に落っこちて……?
でもどうやら助かったみたいだ。
私は目を開けた。視界はぼんやりと霞んでいた。また視力が落ちたかな……
まあ、生きていただけ儲けものか。
でもちょっと違和感があった。昼空の下寝かされているのに、雲の隙間に見える青空が、眩しくなかった。少しは眩しいが、目を突き刺すような痛みは無く、目を細めれば、見ていられた。
「目が覚めたダスか、坊ちゃん」
坊ちゃん!?
せめて嬢ちゃんと呼んでくれ。嬢ちゃん呼びも、ちょっと嫌だけど。
男の人が、私の耳につるを掛け、鼻に眼鏡を乗せた。たちまち視界がクリアになった。
あれ? 私眼鏡なんて掛けていたっけ。
まあいいや。とにかく助けてくれた人にお礼を言わないと。
「ありがとうございます」
ん!?
「ん?」
私は意味の無い声を出した。声を確認するためだけに発する声。
「あー、あー。あ゛ー!?」
声が潰れたように低く、いつものように発声しようとすると裏返り、妙ちくりんになった。
怪我をしたショックで声変わりしたのか? 私、女だったはずだが。
私は起き上がり、尋ねる。
「あ、あの。私、どうなったんですか?」
「まだ混乱しているみたいダスね……」
「そりゃああんな目に遭ったんだから、仕方ねえべ」
土まみれのジャージを着たいかつい男たちは、顔を見合わせていた。
「坊ちゃんは恐らく道に迷ったんダス。酸欠の状態になって倒れている所を、オラたちが発見した。発見が遅れたら最悪の事態になっていたダスよ」
その後、驚くことがあった。隣の男が「天堂茂坊ちゃんに何かあったらオラたちただじゃ済まねえからな……」と言ったのだ。
天堂茂!!?
私は改めて自分の体を見た。
スカートではなくズボンを穿いているし、手指は汚れているものの、白ではなく肌色だ。
体を触ると、脂肪メインの女の柔らかい体では無く、筋肉メインの男の硬めの体だった。
「か、鏡見して!!」
「鏡? じゃあオラの手鏡を」
男はごつい割に花柄の手鏡を出したが、そんなことはツッコまなくていい。私は祈り、鏡を覗き見た。
最後の祈りは届かず、そこに映っていたのは、大がつくほど嫌いな、天堂茂の顔だった。
つづく
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