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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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119 :げらっち
2024/05/11(土) 11:01:12
食堂に居た生徒共は一斉に僕を見て、顔をしかめた。
僕の匂いが、食事の場にはご法度だったからだろう。
だが僕はここのランチなどに興味は無い。
食堂の奥のテーブルで、僕以外のエリートファイブの4人が、談笑しながら食事しているのを見つけた。
よし、あいつらを協力させれば僕の体を持った小豆沢七海を捕まえ、元に戻ることも容易だろう。
僕がこの体でも、仲間であるあいつらなら僕の言うことを信じるだろうからな。
テーブルの隙間を歩いていると、戦隊の1つが反応した。
「あれは小豆沢七海だ! 倒せ!!」
「パンレンジャーの実力を味わえ! ジャムパン投擲!」
ひゅんひゅんとパンが飛んできた。
「やめろ!」
僕はそれをかわしながら、エリートファイブの机に向かう。
「おーい! お前ら! 僕を助けろ!!」
エリートファイブの4人は僕を見るなり立ち上がった。皆がっしりとした体で制服を着込んでいる。うち2名は黒縁眼鏡を掛けている。
「お前は、小豆沢七海!!」
「違う、僕は天堂茂だ!! 同じ戦隊の仲間ならわかるだろ? この僕の赤を見ろ! ブレイクアップ!!」
僕は赤い戦士に変身した。
これでわかっただろう。僕の赤は全ての色の頂点に君臨する、珠玉の赤なのだからな。
だが4人は顔をしかめた。
「馬鹿言え。お前の見た目も声も小豆沢七海だ! 赤になったからって騙されるもんか!」
「茂さんの居ない間にこの底辺女、倒しちゃおうぜ!」
「よしやろう!」
「ブレイクアップ!!!!」
4人は赤い戦士に成った。
馬鹿共、何故僕の言うことを信じない?
「お前ら、僕は天堂茂だと言ってるだろう!! 信じないと父上に言い付けるぞ!!」
するとエリートツーが言った。
「あーヤダヤダ。茂さんの口癖そっくりなこと言ってやがるよ」
「あの口癖うざいよな」とエリートスリー。
「あいつの命令聞くのもうんざりだよね」とエリートフォー。
「ちちうえが~ちちうえが~」
4人はひゃははと笑った。
その時僕は、気分がひゅんと落っこちていくような感覚になった。
心臓だけがエレベーターに乗って、どこか下の方に落ちて行く。下へ下へ。
こいつらは。僕のことを。そんなふうに。思って。
いや。心の底では。わかっていた。
友情など。無いと。父上の名誉と金に隷属するだけの奴らだと。
僕の背中に、パンレンジャーの投げたパンがびしゃびしゃと当たった。
これ以上の屈辱はうんざりだ!! 僕は両の拳を握り締めた。
「火球カースト!!!」
僕はかつての仲間たちに、炎の塊を落っことした。
お前らは優秀だろうと所詮は「努力」というつまらん後付けでのし上がったに過ぎない。
それに比べ僕は生まれながらにニッポンジャーのレッドを継ぐ立場にあった。そして学年1位だ。2位から5位までのお前らとはカーストの上で越えられない壁があるんだ。クリスマスツリーのてっぺんの星とその下の飾りとでは大違いだ!
「ひざまずけ!!」
勢いよく岩の様な炎が落ち、4人は床に打ち付けられた。いい気味だ。
だが4人は立ち上がった。
「やりやがったな小豆沢七海!!」
「や、やる気か?」
「やる気だ!」
4人は炎を次々に生み出した。それらは編み合わさってゆき……
「バーニングループ!!」
炎は一直線になり、メビウスの輪となり、無限のカタチを描いて、空中をうねり、僕に滲み寄った。
マズい、逃げなくては。僕は奴らに背中を向け走るが、炎に追いつかれた。
「あああああああああああ!!!!!」
熱い!
熱い!!
熱い!!!
逃げ切れなかった。炎が僕を飲み込む。戦隊スーツに守られていても、全身が熱い、というより痛い。
僕は無限に焼かれ続けた。永遠の熱さと痛さ、そして仲間を失った絶望に、僕は諦めるように、うずくまった。
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