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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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121 :げらっち
2024/05/11(土) 11:12:26
私は池ポチャした。衝撃を受け、濁水の中に沈み込む。鯉たちが驚いて逃げて行く。
私は口から泡を吐いた。息ができない。急いで浮上し、水面に顔を出す。
「ぷはっ」
「見つけたぞぉおぉおおおお!!!」
セツダンジャーの声だ。最悪だ。
体はびしょびしょで、沼臭い。ずぶ濡れの制服は重く、足を取られながら懸命に走る。
夜に光りを奪われた森の中、セツダンジャーにじりじりと追いつめられる。
「待てや、バラバラに切断してやるぞぉおおおおお!!!!」
ウォンウォンとチェンソーの稼働音が木々の合間をこだまする。恐ろしすぎる。
最終手段だ。
大嫌いな台詞だけど、使うしかない。私は振り向いて、セツダンジャーに向かって叫んだ。
「僕は天堂茂だ!! 僕の父上は理事長だ!! 父上に言い付けるぞっ!!」
流石のセツダンジャーもぴたりと立ち止まり、チェンソーを下ろした。それほど天堂茂の父の効果は絶大らしい。
私はその隙に逃げた。
「はあっ、はあっ」
楓も私の話を聞いてくれなかった。
どうしよう、このまま天堂茂として生きるか?
それだけは嫌すぎる。誰か、話を聞いてくれる人は居ないの?
「コボレホワイト」
闇より、大柄な戦士が現れた。夜の黒に同化していたブラックアローン。
黒は滅多に見ない邪悪のイロ。何度見てもゾッとして、心臓に鳥肌が立ってしまう。何故このような男が戦隊学園の教師なのか。
でも今はそれよりも、彼が私を呼んだ名前に、驚いた。
「私がわかるんですか!?」
ブラックアローンの赤い単眼が、私を捕捉した。
「わかるとも。貴様の肉体は他の男子生徒の物だが、貴様の戦士名は、《コボレホワイト》だ」
「そ」
ホッとして、全身の力が抜けるのを感じた。
「そうです!」
ちょっと意外だった。
コボレンジャーの虹づくりの邪魔をし、私の存在を否定したブラックアローンが、今は理解者のように思えた。
「入れ替わりなどまやかしに過ぎん。貴様らは、何も入れ替わっていない」
「え?」
どういうことだろう。
「貴様の体が男子生徒の物に変化し、男子生徒の体が貴様の体に変化したというだけだ。肉体に於いても、カラーに於いても、入れ替わりなど起きていない」
じゃあ私は小豆沢七海のまま?
見た目が一時的に天堂茂の姿に変身してしまっているというだけなのか?
「どうすれば、戻れますか」
「それは己で考えろ。学ぶというのは、教わるということと同義ではない」
「つまり、学ぶとは、自分で考えるってこと?」
ブラックアローンは黙ったままだけど、それは肯定を意味しているようにも思えた。
「先生!!」
私は初めてブラックアローンを先生と呼んだ。
「私、ネクタイが結べないんです!!」
ブラックアローンは静かに答えた。
「精進あるのみだ」
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