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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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122 :げらっち
2024/05/11(土) 11:21:17

 ブラックアローンはいつの間にか去っていた。
 仕方ない。今日は夜の森で野営でもするか。そう思っていると、まばゆいライトが私を照らし出した。
 黒塗りのリムジンが現れ、私のすぐ横に停まった。運転席が開き、中から50代くらいの男性が姿を見せた。帽子を被った頭は白髪交じりだ。

「だ、誰!?」
「誰って……送迎戦隊タクシージャーの車田(くるまだ)でございますよ。迎えに参りました、お坊ちゃま」
 車田は深々と頭を下げた。
「迎え?」
「どうぞお乗り下さい」
 車田は白い手袋をはめた手で、後部座席を開けた。私は、恐る恐る乗り込んだ。リムジンなので座席は広く、ゆったりとしていた。どこに向かうのだろうか。
「それでは、寮に参ります」

 リムジンは森の中を走った。心地良い揺れの波が押し寄せ、疲れの黒潮に流されて、うつらうつらとしてしまった。


 気付くとリムジンは、屋敷の様な大きな建物の傍に停まっていた。車田はドアを開け頭を下げる。
 私は降車し、その屋敷を見上げた。
 何だココ。お城のようにデカい建物だ。もしかして、学園外に連れてこられた? と思うも、どうやら学園内らしい。
 天堂茂のオーダー寮か。そんなものまであるとは憎たらしい。学園は本当に何でもあるな。レストランやプールもあるし、次は動物園でも作られるんじゃないだろうか。
 でもひとまず一夜を明かす場所が見つかって良かった。

 建物に入ると、5人のメイドが現れ、頭を下げた。
「お帰りなさい、お坊ちゃま!」
「家政姉妹メイドレンジャー、お坊ちゃまのお帰りをお待ちしておりました!」
「お帰りがいつもよりお遅いので、お心配しましたよ!」
「お洋服がおヨゴレになっていますよ、お拭きしましょう!」
「お今日もお顔がおエリートでおイケメンでおられますね!!」

 天堂茂は毎日、こんなおべっか使いに持て囃されているのか? 何だかムカつく。
 ここは天堂茂の物真似をして追い払ってやろう。
「ええい、やかましい。僕は今日疲れてるんだ。さっさと下がれ! 1人で静かに過ごしたい!」
 5人娘は「失礼しました」と言って逃げるように去って行った。

 私は取り敢えずお風呂に入り、池に落ちた時のベタベタと匂い、そして疲れを落とした。
 小さなプールくらいあるゴージャスなお風呂だった。自分の体に関しては、入浴中は気にしないことにした。特に下半身に関しては絶対に見ないようにした。絶対に。

 バスローブを着て広い屋敷を歩いていると、大きなテーブルの上に御馳走が用意されていた。浴後のタイミングを見計らってメイドが用意したらしい。
「いただいちゃおうかな」
 ハンバーグに蛇のスープ、野菜ムースにハーブティー、どれも一流なのだろう、美味しいものばかりだった。
 でも私は、楓の手料理の方が、食べたかったな。ごめんね楓。


 お腹も満たし、寝室に入る。天堂茂の寝ぐらになど入りたくないが仕方ない。
 そこは特上超ゴージャスセレブキングロイヤルスウィートルームだった。
 無駄に大きなベッド。無駄に大きなソファ。レッドカーペット。金きらの壁や床。威圧的なシャンデリア。何故こんなところにあるのかわからない高級そうなツボ。価値が理解できない絵画。
 金持ちをひけらかされているようで、ムカついた。
 この部屋は松竹梅の「松」であり、私たちがいつも使っている部屋が「苔」くらいに思えるが、私は苔の方が良い。だってこの部屋には楓が居ない。お飾りのメイドが居るだけの、1人ぼっちの寂しい空間だ。

「……そうだ」

 私は、ニヤリと笑みを浮かべた。

 いつも嫌味をたっぷりと頂いているお礼をしなくっちゃね。
「ブレイクアップ」
 私は変身すると、硬い硬い氷の棒を生み出した。
「霜バット!」
 そして、偉そうに台の上でふんぞり返っているツボに、狙いを定めた。
「喰らえ!!」
 私はバットをフルスイングした。
 カキン! ガチャン!!
 ツボは吹っ飛んで壁に当たり、粉々に砕けた。
 手に余韻が染み渡る。
「あ、きもちいわコレ」
 私は続けてソファを壊し、カーペットを引き裂き、絵画をビリビリにし、壁に穴を開け破壊の限りを尽くした。
 いつもいつも私たちを馬鹿にして。これくらいで済むと思うなよ?
「ふぅ、ふぅ」
 大方の物を壊すと、変身を解き、ベッドの上に仰向けに倒れた。
「溜飲下がりまくり」

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