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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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126 :げらっち
2024/05/11(土) 11:38:16
5階の一番奥の部屋に辿り着いた。「小豆沢」「伊良部」という表札がある。
そういえば失念していた。こいつらは相部屋だったのか! 狭い部屋とはいえ1人で足を伸ばせると思っていたが、これでは休まれない。
しかもよりによって同室が伊良部楓だと?
「七海ちゃん、おっかえりぃ~!!」
扉を開けると、エプロン姿の伊良部が出た。
「ねね、約束通り、今日はあたしがご飯用意したよ! 手作りだよ! インスタントばっかじゃ飽きちゃうからねぇ! あ、でも疲れてる? 先シャワーにする? ご飯にする? それとも第三の選択肢? キャー!」
気持ちが悪い。
一般女子寮や男子寮が低俗な会話で溢れているかと思うと、反吐が出る。落ちこぼれ程会話の質は低くなるものだ。
伊良部は、鰻ほどではないがチビで、しかもブスで、学年で最も成績が悪い。エリート中のエリートである僕の対極と言える正に「落ちこぼれ」だ。小豆沢七海とくっついているのも、類は友を呼ぶというアレだろう。お似合いだな。
あーあ、どうしてここに来てしまったのか。冷静に考えれば、こんな汚らしい部屋、来なければよかったな。
部屋に入ると、窓が割れていた。粗悪な寮とは知っていたが、ここまで荒れすさんでいたとはな。
僕は小さな茶ぶ台の前に正座した。
並べられた料理は、魚のムニエルらしきものと、変な色のスープと、そもそも何なのかわからない焦げ付いた物だ。どれも究極に不味そうだ。
「そうそう、聞いてよ七海ちゃん! さっき天堂茂がこの寮に侵入してね! あたしが追い出したんだよ!」
「なに!!」
僕は茶ぶ台を強く叩いた。料理がこぼれ落ちそうになった。こぼれてもいいが。
「うん。驚くでしょ? あいつ変態だったんだねえ。七海ちゃんがどうとか言ってたし、本当は七海ちゃんのストーカーなんじゃね?」
小豆沢七海、僕の体でなんてことをしてやがるんだ!!!
いや、中身が小豆沢なら、自分の寮に戻ろうとするのは自然なことか? であれば先回りしてここで待ち構えて捕まえてやればよかったな……
「いいから食べてよ!」
僕はお腹がすいていたので、仕方なく不味そうな料理に箸を付けた。
ムニエルらしきものを口に運ぶと、浴槽の味がした。調味料と間違えて、洗剤を入れたんじゃないのか。
「不味い」
「え……そんなこと言うなよー! 七海ちゃんてカレーみたいに辛口だよね!」
伊良部は邪気無く笑った。どこまで阿保なんだこいつは。
「落ちこぼれの、クズが」
僕は今口に含んだ分を、ペッと、料理の上に吐き出した。
「?? 何してんの七海ちゃん」
「見りゃわかるだろ。こんな料理は食べるに値しない。もう我慢の限界だ!!」
僕は再度、茶ぶ台を強く叩いた。今度こそ料理はこぼれた。
「やめてよ七海ちゃん! 何でそんなことすんの!! 七海ちゃんの馬鹿!」
伊良部は涙ぐんでいる。勝手に泣いていろ落ちこぼれ。
さっき小豆沢がここを追い出されたということは、まだ近くに居るはずだ。あいつを捕まえ、僕の体を取り戻す。
僕は乱れたネクタイを、キュッと締め直した。
「……お前」
伊良部がこちらを睨んでいた。
落ちこぼれの癖に、文句があるのか?
「七海ちゃんじゃないな!? 七海ちゃんは辛口発言はするけど、ネクタイは結べないもん!!」
「なんだそりゃ!」
僕と伊良部は立ち上がり、同時に変身した。
「ファイアペンシ……」
「なみつなみ!!」
魔法の巧拙以前に、属性の相性というものも存在する。僕の炎は水に弱い。そして伊良部は青、水属性だった!
落ちこぼれに負けるとは、何たる屈辱! 炎は打ち消され、僕は水流にまみれて、窓から外に放り出された。窓が割れているのはこういうことだったのか!
そして僕は、豪快に池ポチャした。
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