Yahoo!ショッピング

スレ一覧
380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
 ┗156

156 :げらっち
2024/06/01(土) 13:07:51

第14話 黒星


 6月3日 金曜日 赤口

 学生食堂にておひるごはん。
 私・楓・佐奈・豚ノ助の4人。
 公一だけは夜の授業に備えて寝てるけど、コボレのメンバーでそろって食事できるのは嬉しい。中学校では毎日ボッチ飯だったから……

「5月25日、占星戦隊ウンメイジャーに負けを予言されるも、ブチ切れてコボレーザーで吹っ飛ばす。同27日、私と楓の部屋に侵入者があった。寝込みを襲うチャバネ戦隊ゴキブレンジャー。虫よけスプレーで撃退。同31日、毒草戦隊ポイズンジャーが夕食に毒を仕込むも、私たちは補習を受けていて食堂に行くのが遅れたので難を逃れる。6月1日、公一がトイレに忍んでいた暗殺戦隊アサシンジャーに狙われる。私たちが駆け付け、便槽内に閉じ込める。同2日、親父笑隊ダジャレンジャーが勝負を挑んできた。おやじギャグ対決でコボレの勝利……」

 私は日記帳を読み上げた。華々しい様な、そうでも無い様なコボレの戦績が綴られている。
 それでもこれだけは言える。戦ー1の優勝予想で見事最下位に輝いたコボレンジャーは、未だ敗退していない。
 泡沫戦隊を振り払えるくらいには私たちは実力をつけてきた。

「これ見てよ!」
 向かいに座る楓が、菓子パンをボロボロこぼしながら、《週刊☆戦隊学園》を開いて私に見せた。
「残り100戦隊切ったって!! 案外楽勝じゃね?」
 楓は立ち上がると、エンディングに流れていそうなダンスを踊った。
「頑張れコボレ! ふんばれコボレ! あほでも駄目でも本気でドカン! 略してADHD!」
「それ面白いね。でも手強い戦隊だけが残っているとしたら、ここからが本当の勝負なんじゃない?」
「えー、七海ちゃんマイナス思考!」
「現実主義と言ってほしいんだけど」

 すると、隣に座っていた佐奈がガタッと立ち上がった。
「チビって言うな!!」
 佐奈は立ち上がったとしても座っている私くらいの背しかなく、チビと呼ばれると親を殺されたレベルで憤る。まあ佐奈は両親を毛嫌いしてるので親を殺されるよりチビと言われる方が怒りそう……という一抹の邪推は忘れよう。
「あー、またさっちゃんの地雷を踏んだの?」
 楓が豚をなじった。
「ええ? 今はチビって言ってないブヒよ!!」
 佐奈の向かいの巨漢は困惑し、豚っ鼻をひくひくさせていた。
「佐奈ちゃんの唇にパンが付いてるよ、って言ったんだけど……」

 私は察した。

「成程、くちびるがチビに聞こえたのか」
「え……」
 佐奈はきまり悪そうに、唇に付いたパンのカスを手で取り、パクっと食べた。
「でも七海さん、この豚はうちのことをチビって思ってるんだよ!!」
「思うだけなら自由ブヒ!」
「あーやっぱり思ってるんだ!!」

 いっつもこの調子だ。

 そういえば、佐奈や豚がコボレに加入したのも、この食堂での出来事だ。なつかしい。
 豚は元々、食事の列を割り込みし、佐奈をチビと呼んだいじわるな豚だった。
 でもこのところは大人しく、むしろコボレの中では温厚な立ち位置になっている。
 それでもどうしても佐奈とは豚が、いや馬が合わない。

 カラフルなメンバーを集め、虹を作る、それが私の目的。
 だのに、ちぐはぐなメンバーはカラーが濃すぎて調和できず、7人どころか5人でもまとまりが無い。先行きが少し不安になってくる。

 私は立ち上がって、両者を仲裁する。
「いい加減にして。佐奈も豚も、コボレンジャーの大事なメンバーだから。仲間割れはやめて。敵は他に居るでしょ?」

 ドスン、揺れが走った。

「ねぇ七海ちゃん。喧嘩してる場合じゃ、ないみたいだよ……」

 再び、ドスン。

 楓が不穏な表情で、私の後ろを指さした。
 私はゆっくり、振り向いた。窓の外に巨大な影が見えた。

[返信][編集]



[管理事務所]
WHOCARES.JP