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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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157 :げらっち
2024/06/01(土) 13:08:12
戦隊学園の校庭は広い。
レッドグラウンドは、東京ドームが四人兄弟だったとしてもすっぽり入るほどの広さだ。
そこに現れたのは、中央校舎の5階にまで背が届く巨人。私たちの居る食堂が5階にあるので、巨大な頭部が見えている。
全身が迷彩色。こんなにデカければどこにも隠れられないから迷彩は役に立たないだろうに。
私は食堂の窓を開け放ち、風と熱気を呼び入れた。少し眩しいが、これは見なきゃ損をする。
私たちと同じように多くの生徒が窓から身を乗り出してロボの挙動を見てるようで、ざわめきが感じられた。
人の数と同じだけの関節を持つロボは、腕や足を屈伸させていた。
「ロボットだ!! 本当に動いてる」
「準備体操しているみたい」
「ロボなのに!?」
「ねぇ、何が起きてるの……?」
佐奈は窓まで身長が届いていなかった。
「見たい? 見たいよね」
私はそんな彼女の脇に手を入れ、後ろから持ち上げようとしたが。
「お!」
予想以上に重くて断念した。重いと言いそうになったが、チビと同じく佐奈の逆鱗に触れるかもしれないので、言い留まることができて良かった。
小さい割に、重い……きっと私や楓とは違う物質で構成されているのだろう。
「だいじょうブヒ?」
豚は佐奈を軽々と肩車した。
「きゃあ!! 子供扱いすんな! おろせ~!!」
巨大ロボの頭部はコクピットになっているようだ。腹話術の人形のように口が開閉し、人がスピーカーで話しているような声が発せられた。
『こちらアーミー電兵隊。ジュウキマン、待ちくたびれたぞ。早く出てこい! どうぞ』
ロボは右腕を曲げてまるで腕時計を見るかのような仕草をした。そこには砂時計が取り付けられており、砂は落ち切ろうとしていた。
『タイムアウトの不戦勝かな? これでアーミー電兵隊の勝ち星は10つ目だ! はーっはっは!!』
すると向こうの森から、5つのロボが木をなぎ倒してグラウンドに侵入してきた。黄砂が舞い上がる。
アーミー電兵隊のロボは身構えた。
「あれが相手のロボブヒ?」
「いや、あれは……」
それは重機だった。
赤いパワーショベル・青いブルドーザー・黄色いオフロードダンプ・緑色のミキサー車・桃色のクレーン車が、砂煙を上げて現れた。そのどれもが、規格外にデカい。
「七海ちゃん、あれ見たことあるよね。あたしたちが機械クラスの見学に行った時、整備されてたやつだよ!!」
5台の重機は横一列に並んで止まった。
突如、上空に真っ赤なヘリが飛来した。
『レディース&ジェントルメーン! なんて、古い声かけは使いマセンよー! ジェンダーレス! 心はレディーのジェントルメンも! 見た目はボーイのガールズも! 戦ー1注目の一番で御座いマス! 実況はわたくし、配信戦隊ジッキョウジャーの実況者YUTA!』
何だこれ。
『片やアーミー電兵隊! 優勝予想5位に輝いた、エリートファイブの対抗馬デス! 今回は満を持して、自作の巨大兵器・アーミーロボで勝負を挑む!! その戦力や如何に?』
迷彩柄のロボは、筋肉があるわけでもないのにマッスルポーズを取った。
校舎から歓声が湧き上がる。
『対するは建築戦隊ジュウキマン! 力仕事はお手の物、古くなった男子寮を改築したのもこいつらデス! デザインジャーに発注した兵器で勝負を受けマス。購入額は驚きの……おーっと、早速合体を始めマシタよ!』
まるで工事現場の近くに居るかのような騒音が響いた。5台の重機は変形を始めた。
アーミーロボはライフルを向けたが、合体中の重機の周りには巨大なカラーコーンが置かれ、「工事中 決して攻撃しないで下さい」との看板がいつの間にか立てられていたため、アーミーロボは大人しくそれに従った。
オフロードダンプが荷台を下ろし、その上にブルドーザー、更にその上にパワーショベル、ミキサー車、クレーン車が乗る。まるで重機の組体操だ。
荷台が上がると、オフロードダンプの四輪は強健な脚となり、ブルドーザーは胴体を守備するブレードとなった。
ミキサー車は右肩に位置し、ドラムから右腕が出現。クレーン車は左肩に位置し、長いクレーンを地面に垂らした。
パワーショベルは胸から首を形成し、首から頭の代わりに大きなショベルが伸びているという奇抜な格好になった。
人のカタチからはかけ離れている。しかしその大きさは、見る物を圧倒した。
『完成、獣機王(ジュウキオウ)』
関節からスチームが噴き出した。
私も楓も豚も、顎が外れてしまったのか、口をぽかんと開けたまま、この現実離れした光景を、まばたきもせず見つめていた。
豚に担がれていた佐奈が呟いた。
「でか。これってもう無理ゲですよね」
アーミーロボは既にちっぽけに見えた。
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