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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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16 :げらっち
2024/05/04(土) 13:59:43

 学生寮はホテルのようになっている。ロビーで事務レンジャーの女性に鍵を貰おうとしたが、「ルームメイトの子がもう持って行ったよ」と言われた。つまり楓はもう部屋に居る。
 あんな別れ方をしたから会いたくないが、私は別に彼女に悪い事をしていない。素直に自分の思いを言ったら喧嘩みたいになっただけだ。居直ってやる。

 エレベーターで5階に行き、カーペットの敷かれた廊下を歩き、一番奥の部屋へ。
「小豆沢」「伊良部」と表札の掛けられた部屋。
 その前の廊下はやけに散らかっていた。何だろう、一瞬わからなかったが、よく見るとそれは私の私物だった。寮に運び込まれていた衣類や教科書などなどだ。楓が放り出したに違いない。
「ふざけんな!!」
 私はドアをキックした。爪先が痛いだけだ。
 私は呼び鈴を長押しした。出てこない。無視を決め込み、私を追い出すつもりか。私は呼び鈴を連打する。
 そのうち騒音に耐えかねたか、カチャ、とロックが外される音がし、ドアが開いた。私はドアを掴んで思い切り開けようとしたが、チェーンが掛かっており半ばで止まってしまった。ドアの隙間から怒鳴り声がした。
「来んなよ! 酷いこと言った癖に!!」

「酷いこと? 私はただ自分の感じたことを言っただけだよ。私、気になったことはすぐ口に出すタイプだって前置きしたよね? そもそも私は自分の部屋に来ただけで、追い出す権利はあなたに無いと思うな」

「は!? 意味わからん! あっち行け!!」
 隙間から何か重たくて硬い物が飛んできて、私の額にクリーンヒット。脳がチカチカし尻餅を突いた。ぶつけられた物は動物図鑑だった。

 結局、カラフルな仲間なんて幻想にすぎないんだ。

 友達なんてできるわけないんだ。それならもう、出て行った方が……

「……結局あなたも、私のことを嫌うんだ。私は白いから……」

「は? そんなこと言ってないじゃん!! 何でそうネガティブなの!? ムカつくな!」
 ドアの隙間から、楓が顔をのぞかせた。目が合った。私は改めて彼女の青の美しさを知る。顔はそんなに美しくないが。

「白いのを嫌ってるのは七海ちゃん自身じゃん!! あたしが嫌いなのは七海ちゃんの、そういう所だよ!」

 そのまましばらく見つめ合っていた。


 私は無意識に1秒、2秒……とカウントしていた。こういう時、何を言うべきかはわかるが、言ったことのない言葉だから、なかなか口が動かない。15秒経ったところで楓のほうが喋った。

「何か言えよ!」
 楓は勢いよくドアを閉めてしまった。
「ご!」
 私は急いでドアをノックした。
「ごめん……酷いこと言ってごめん」
 しかしドアは内側から鍵が掛かっていて、開かない。
「ごめんったら。開けてよ!」
 ガチャガチャと取っ手を引く。
「優しくしてくれたのに、酷いこと言ってごめん。私のことちゃんと見てくれたのは、あなたぐらいだ。友達、欲しいんだ。友達に、なりたいんだ……」
 するとドアがちょっとだけ開いた。隙間から楓のむすっとした顔が見えた。
「あたしも友達になりたい。七海ちゃんの白は好きだから」
「私もあなたの青が好きだから対等な関係だ」
 私は取っ手を引いたが、まだチェーンが掛かっており半開きの状態。
「あ、まだ許してらっしゃらない?」
「ジュースおごってくれたら許す」
「いいよ。何がいい?」
「炭酸以外ならなんでも」
「わかった」


 友達、できてよかった。


 私はUターンし、廊下の向こうにある自販機を目指した。

 軽いステップで自販機に到着すると、硬貨を投入する。
 生活費は多くは必要無いが、お菓子やジュース、娯楽類は自費で購入する必要がある。お金が無い生徒は、学内でのバイトで稼ぐことも可能らしいと、入学前にパンフで見た。
 私は胸を張って並ぶジュースのサンプルのうち、コーラの所のボタンを押した。しめしめ。

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