セブンネットショッピング

スレ一覧
380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
 ┗160

160 :げらっち
2024/06/01(土) 13:10:39

「俺はヨコヅナレッド・赤鵬だ」

 名前からしてドスコイジャーで一番の実力者と思われる巨漢。
 身長は目測220。炎の模様の赤い着物、大銀杏の乗った、岩のような頭。刃物のような鋭い眼がこちらを見下ろしている。

「大和魂!! のフェアな勝負を挑みにきた。おい大口、てめぇに用がある」

 赤鵬が指さす方を見ると、楓が居た。その後ろには豚ノ助。楓の後ろに懸命に体をしまい込んで隠れている豚だったが、尻は愚か全身が丸見えだった。
「おい大口ィ! 返事をせんか!!」
「ブヒィッ!」
 豚は本当の家畜のように叫んだ。
 彼の本名が大口序ノ助であることを、私は完全に忘れ去っていた。みんなそうだろう。下手をすると、本人も忘れていたのかも。

「格闘クラスの面汚しめ。ドスコイジャーを抜け出して女共の味方をしているような腐った奴に、力士を名乗る資格はねぇ」

「ピンク色のお前は女の戦隊がお似合いでごわす!!」
「キャバレンジャーにでも入隊するでちゃんこ!!」
 赤鵬の周りの力士が茶々を入れた。

「男女平等だよ!!」と楓。

 赤鵬は自戦隊から脱走した豚を痛い目に遭わすために、勝負を挑みにきたのだろうか。
 いや、そうではないだろう。これも天堂茂の差し金に違いない。
 天堂茂は授業参観の際、私たちに救われた。そのことが余計に闘争心に火を付けたのだろう。コボレンジャーを潰そうと躍起になっている奴の姿が、容易に想像できた。

「これは相撲の勝負だ。俺たちは7人」
 赤鵬の後ろには、彼に負けず劣らず大きな6人の男たちが並んで居た。
 彼らは壁のようになって廊下を完全に塞いでおり、通ろうとしている生徒たちは迂回する必要があった。

「大口、てめぇは1人だ。てめぇは一日一番、俺たちと相撲を取る。てめぇが勝ち越せばオチコボレの勝ち、負け越せばドスコイジャーの勝ちだ。フェアなルールだろう。これぞ大和魂!!」

 赤鵬は腹をポンッと叩いた。大和魂とはいったいどういう意味だろうか。
 豚は小さい声で言った。
「僕にはできない」
「逃げるのか? 小心者の豚野郎。お前はもう力士を諦めるということだな?」
「戦隊はチーム戦ブヒ。僕が挑発に乗って、コボレンジャーを負けさせてしまうわけにはいかない。断髪するブヒ。相撲を捨てても、僕はこのチームに居たい」

 豚は挑発に乗らなかった。
 でも。
 私という人が、煽りには煽りで返す、売られた喧嘩は買う主義の人だということを忘れてはいけない。

「ねぇ、おかしくない?」
 私は赤鵬に詰め寄った。身長差により45度以上ナナメ上を見る必要があった。
「何で他人から命令されて夢を諦めなきゃいけないの? 豚、相撲やめないでよ。こんな奴やっつけて、あなたの実力を見せてやればいい」

「小娘が」
 パァン!! 風船が割れるような音がして、頭蓋骨が痺れるような痛みが走った。危うく倒れる所だったが、何とか2本しか無い足でバランスを保つ。耳がキンとして左顔面が無感覚になる。私は頬を押さえた。ジンジン、熱く疼いてきて、自然と涙が垂れた。

「七海ちゃん!!」
 後ろで楓が叫んだ。
「女の子に手を上げるなんて!」
「男女平等だとお前が言ったんだろう」と赤鵬。

 赤鵬は私に容赦なく張り手をした。奴の掌は私の顔ほど大きく、板を張ったように硬かった。
 正直、泣くほど痛い。でも気持ちで負けたくはない。歯を喰いしばり、私は言った。

「……ふぅん。一般人に手を出ふのは格闘家とひて最低だね。ゲホッ。そもそも、押し付けルール自体がフェアじゃない。5vs5の勝負にしようよ」
「ふざけんじゃねえ!!」
 鋭い突きがあった。胸元に衝撃が走り、臓器が挫滅したような、内側から体を抉られるような感覚があった。苦しい。呼吸が止まる。
 両足が地面を離れ、私は後ろに飛ばされていた。
 力士の手は武器になる。1人の人間が兵器に匹敵する力を持っているのは驚くべきことだ。肉体を強化し、常人なら一撃で死んでしまうような立ち合いを何番も重ねて、豚は頑張っていたんだ。一瞬のうちに思考が目まぐるしく回ったため、景色がスローモーションのように見えた。

 ドンッ、背中から何かに突っ込んだ。それは硬い壁ではなかった。柔らかい、人肌だった。
 豚が私を受け止めてくれていた。

 豚は低い声で言った。

「僕のことはいい。でも、七海ちゃんに手を出した奴は許さない。ごっつぁんです、受けて立つブヒ」

[返信][編集]



[管理事務所]
WHOCARES.JP