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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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173 :げらっち
2024/06/01(土) 13:27:17
豚はうちをお姫様抱っこして、脱衣場に運んだ。
長椅子というベッドに、銀シャリの上の赤身魚のように寝かされた。
「少し休めば気分良くなるブヒよ。あ、ちょっと待っててね」
豚はその場を離れた。
もう帰ってこないでくれ……
うちは1人、天井をぼんやりと見ていた。
豚が居ないうちに着替えて逃走したいが、まだ頭がぼーっとしていて、起き上がれそうにない。
扇風機が首を振り、こちらに冷風が流れてきた。ひんやりきもちいい。
たったあれだけのことで倒れるとは、うちは栄養不足に運動不足、寝不足の三魔人を全て召喚してしまっているようだ。
どのくらいが経っただろう。案外短い時間だったのかも。
豚が地を揺らして戻ってきた。
「これ飲んで!」
豚は飲料を持ってきた。
うちはようやく上体を起こせるまでに回復していて、豚から貰ったそれを飲んだ。
「ごく……」
冷たく甘い。糖分が扁桃腺を、心臓を、脳を潤し、朦朧としていた意識のピントを合わせた。
「うちの好きな、ミルクティ」
次に豚は、うちが浴室内に落としてきた眼鏡を取ってきた。それを掛けると、視界のピントも合った。
「ダイジョウブヒ?」
豚は当然だが、前をタオルで隠していた。廻しのようだった。
「大丈夫ではない。ていうかさ、あんた来てるの気付かなかった。脱いだ服が無かったんだもん」
「ここにあるブヒ」
豚は手を伸ばし、棚の一番高所にあるカゴを取った。そこに彼の衣類が入っていた。
「うわ、うち届かないとこじゃん……とりあえずパジャマ着るからさ、見ないでくんない?」
「了解ブヒ」
豚はカゴを持って、棚の裏側に回った。
うちは体を拭き、着替え始めた。
すると棚の向こうから、同じく着衣中の豚の声が聞こえてきた。
「僕のパパとママは、地元でご当地ヒーロー・ちゃんこマンをやってるブヒ。ちっぽけだけど、カッコイイ、僕の憧れブヒ」
何故このタイミングで自語りをする?
あんたの身の上話なんて聞きたくもない。
そうきっぱり言おうかと思ったが、ミルクティの恩もあるので、無視するだけにとどめる。
「もう1つの憧れは、力士になること。相撲は、国技なんて気取って、古いしがらみに捕らわれていたけど、その根本は、純粋な力のぶつかり合いだと思ってる。だからどこの国の人でも良い。世界中の力自慢が、その身1つで戦うのがカッコイイんだ」
あまり興味の無い話だ。
「小さいって馬鹿にされても、大きく強くなれるんだよ」
「……何それ」
うちはパジャマのボタンを留めていたが、そこでようやく反論した。
「それはうちに対する同情ですか? 都合の良い解釈ですか? あんたもうちのことをチビって言ったんだよそれを美化しないでくれる。チビって言ったやつはねぇ例外なく一族郎党恨み続けるから。陰湿って言われても、いいから」
すると棚の上から、太い腕が伸びてきた。
「なに?」
豚が写真を差し出していた。
うちは背伸びしてそれを受け取った。
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