スレ一覧
┗
380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
┗175
175 :げらっち
2024/06/01(土) 13:28:10
《七海》
六日目の土俵。
控えに座るドスコイジャーの黒ノ不死は、身長3メートル・体重300キロの超巨漢。
「平均身長の高くなった昨今でも突出している、学校一の巨漢。肌は黒く、いかつい風貌で、重戦車の異名で恐れられている……だってさ」
私は力士紹介のパンフに目を通した。
「へえー。七海ちゃんは身長いくら?」
「1.67メートル」
「高くてうらやまだよなぁ。うちより11センチも高い。160ほしいぜー」
私はアイコンタクトを送った。
佐奈が居る所で身長の話はタブーだよ楓。
すると楓は「あっごめん!!」という視線を返信してきた。私と楓はいつの間にやら目と目で会話できるようになった。ドミトリー効果も起こるし、色々大変だ。
そう、今日は佐奈も一緒だった。砂かぶり席にはコボレガールズがそろっちゃっている。
でもその佐奈は、私たちの身長のやり取りを聞いても、全く不快な顔をしなかった。豚の応援に来たというだけでも異常事態なのに、異常に次ぐ異常だ。
時間が近付いても、豚はなかなか現れない。
黒ノ不死は立ち上がった。それはまるで二足歩行を覚えた熊のようだった。真っ黒な顔面に白眼だけが浮いており、その中で黒眼がギョロッと動いた。
「まさか相手が怖くて逃げ出しちゃったんじゃ?」
「それよりも昨日の怪我が深刻だったのかも……」
「大丈夫、豚ノ助はゼッタイ来るから」
そう言ったのは、胡坐をかいている佐奈だった。
「そして、勝つから」
「うわ、さっちゃんが豚の肩を持つってどういう風の吹き回しー!?」
もしかしたら、私の作戦が上手くいって、豚と仲直りできたのかもしれない。
それならしめしめだ。
観客席が、やにわにざわつき始めた。
ガッチャン、ガッチャン、足音を鳴らして。花道を窮屈そうに頭を下げてくぐり抜け、巨大なロボットのようなものが歩いてきた。いや違う。機械の鎧と言うべきものだ。
顔の部分だけは生身の人間、豚ノ助の顔だった。
私と楓は叫んだ。
「ぶ、ぶたのすけぇー!?」
佐奈は自信満々に言う。
「違う。あれは……メカノ助」
観客席は騒然としていた。
メタルグレーのヘルメット。鋼鉄の巨大な腕、巨大な足。ぎこちない動きながらも、その巨人は見る物を唖然とさせた。
何だかロボコップみたいだな。
メカノ助は土俵に上がった。鉄の足に踏み付けられ、土俵はプリンみたいにへこんだ。
今やその体は黒ノ不死より一回り大きい。黒ノ不死は初めて出会う自分より大きな相手を前にして、困惑している様子だった。
赤房下の赤鵬が怒鳴った。
「反則だろうがぁ!」
でも公一の変装である行司は淡々と仕切った。黒ノ富士は漆黒の戦士に変身した。
行司の居場所が無いほど、土俵は窮屈になっていた。
巨人たちにとって土俵はマンホール程度の大きさしか無く、少しぶつかり合うだけでもすぐに飛び出てしまいそうだった。
「さっちゃんアレは?」と楓。
「足怪我したって言うから、最初は補助具を作ろうと思ったの。でも作ってるうちに、全身改造しちゃえ! ってなった。そんだけ~」
「すご! 天才か?」
「天才です。今さら気付いたの?」
「時間です! 待った無し!」
2つの巨体は蹲踞の姿勢を取る。これだけでも体が土俵からはみ出しそうなほどだ。
場内はシンと静まって。
黒ノ不死は雄叫びを上げ突っ込んだ。
常人ならひとたまりもないだろう。でも全身を鉄で固めたメカノ助は違う。
機械の豚は一歩も退かず、いとも簡単にその突撃を受け止めた。黒ノ富士はコンクリートの壁にぶつかったトラックのようにひしゃげた。
「そっちが重戦車ならこっちはジェット機ブヒ。ブースト押し出し!!」
メカノ助は背中から炎を噴いた。背後に居た客たちは悲鳴を上げた。
ジェットエンジンで、一気に黒ノ不死を土俵の外に押し出した。
落下地点に居た赤鵬は、哀れ黒い巨体の下敷きとなった。
「グああ!」
「ブヒトリー(ビクトリー)!!」
座布団が乱舞した。豚ノ助は星を五分に戻した。
ついに佐奈と豚も結束し、コボレの大きな戦力となった。
「やってくれると思ったよ佐奈」
私はついつい佐奈の頭を撫でてしまった。おっとマズい。これは禁忌だ。
手を引っ込めようとするも、佐奈は猫のように目を細めて、素直に撫で撫でされていた。
「七海さん、もっと撫でて♡」
「よ、よしよし……」
楓がヘンな目で見ていた。
異常は続くものだ。
[
返信][
編集]
[
管理事務所]