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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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206 :げらっち
2024/06/08(土) 00:17:00
オイラと黒ずきんは緑で敷き詰められた地を歩く。
黒ずきんはさっきの巨大顔面形態から、通常形態に変わっていた。黒い頭巾を被ったおっさんの頭。本来なら首につながっている部分から、毛だらけの太い短足が2本生えている。これが通常形態だ。ひょこひょこ千鳥足で、オイラの後を付いてくる。
赤ずきんならぬ黒ずきんはしゃがれ声で言った。
[凶華はお人好しだな。さっきの親父をバラシて金と宿を手に入れることだってできたんだぞ?]
「くっせえ所は嫌いだって言ってるだろ」
あの宿からは随分と離れたので、匂いはしなくなった。
オイラは嗅覚が優れているようで、何かと匂いを感じてしまう。イイ匂いなら良いのだが、い~やな匂いは拒否反応。
「ビラ校も臭かったから抜けて来たしな」
ビラ校、ヴィランズ高等学校。
あそこに居る奴らも、さっきの宿屋のおっさんと同じだった。オイラの姓が星十字だと聞くと、おだてたり、一目置いたり、距離を置いたり、怖がったり、あからさまに邪険にしたりと、多種多様だったが、オイラを対等に見てくれる人は1人も居なかった。
日が傾き始めた。
さてこれからどうするか。早めに寝床を探さないと、夜は怪人が活動的になる。
腹の虫が鳴いた。一体、どんな虫だろう。黄金虫みたいなやつかな。そういえば、今日はまだ何も食べてないな。
「オイラの嗅覚は、ハラは満たしてくれないからな……」
[人間は大変だねえ]
黒ずきんはひょこひょこ俺を追い抜いた。
[怪人は便利だよ。食欲も無ければ性欲も無い。唯破壊を繰り返すだけ]
引っかかるワードがあった。
「せーよく?」
[男と女が生命を残そうとする欲だ。トラブルばかりを引き起こす。ま、お前には無縁だろうがな]
オイラにはよくわからない。
黒ずきんはオイラを見上げて、後ろ歩きでオイラの前を進んでいる。
「全ての怪人に欲が無いのか?」
[さあな。何にでも例外はある。俺だってそうさ。怪人の癖に、恵まれていることに、まだ言葉と、理性っていうもんが残されている。怪人の中では俺が特例であり、障害者だ]
すると黒ずきんは「おおっと」と言って止まり、ジャンプして、前に向き直った。
[止まれ凶華。この先には行かない方が良い]
オイラは行く先を見た。
緑と赤の境界線。境目の向こうは、ジャムのような赤いものが塗ったくられた地。
[入らない方が賢明だ。生命が踏み込めば死んでしまう。入れるのは、俺のような怪人だけだ]
赤の日、世界のあちこちが赤く塗られたという。
[俺にはカミさんと、息子と娘が居た。カミさんなんか俺の事ゴミ扱いだったがな。赤の日に俺たち一家は塗り潰された。俺だけは、まだあっちに逝きそびれている。運が良かったのか、悪かったのか]
オイラは二ッと笑った。オイラのデカい犬歯が口からはみ出しただろう。
「良かったんだよ。じゃなかったら、オイラはお前に会えなかったもん」
黒ずきんもオイラを見上げ、にた、と笑った。
[それもそうだ]
「居たぞ!!」
怒声。
オイラたちが歩いてきた方から、5人の戦士が走ってくる。
赤・青・黄・緑・ピンクの戦士。
[不味いぞ凶華。あの宿の親父、本当に戦隊に通報したらしい。戦隊は怪人を狩り悪を倒すことに固執している正義の味方ヅラをした奴らだ。このままでは俺もお前も消される]
「そこまでだ!! 猟友戦隊ゴハンターがお前らを駆除する!!」
黒ずきんの言った通りになりそうだ。
前門の戦隊、後門の赤き地。虎や狼がまともに思えるくらいには万事休す。
「黒ずきん、お前を信じる!」
オイラは黒ずきんの頭に飛び乗った。
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