Yahoo!ショッピング

スレ一覧
380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
 ┗208

208 :げらっち
2024/06/08(土) 00:19:38

 野生の猪が現れた!!

「よっしゃ、今日はイノシシ肉だ!」
 オイラは猪を追いかける。
 赤き地があった。猪は本能的に赤を避けて、ギリギリの所を逃げていく。オイラは世界を走り回って鍛えた脚力でそれを追う。
 命がけの鬼ごっこ。さっきは追われる側だったが、今度は追う側だ。
「待て待てぇ! 楽しいが、ここらで終わりだ!」
 オイラはスライディングし猪を捕まえた。ゴツゴツした毛皮。獣は藻掻き、必死に逃げようとする。
「暴れるな! オイラの栄養になってくれー!!」

 どかん。

 火の手が上がった。

 オイラは猪を取り逃がしてしまった。そんなこと、どうでもよくなった。
 赤き地を跨いだ向こう側で爆炎が上がっている。あのランドマーク、巨木の傍だ。オイラは夢中で走るうちに、いつの間にか、赤き地を挟んだ所まで来てしまったらしい。
 目を凝らして見ると、巨木の下では、黒ずきんが戦隊に追い詰められている。赤・青・黄の3人戦隊だ。
「逃げろ黒ずきん!!」
 たかが10メートルほどしか離れていないのに、オイラは人間だから赤き地を踏めない。迂回する必要がある。
 向こうの動向をうかがいつつ懸命に走る。


 赤い男が黒ずきんに詰め寄っていた。

「悪いが怪人に人権は無いよ♪」

 黒ずきんは後ずさりながら言う。
 [ああ、そういう運命だというのは知っている。俺が死ぬことに異議は無い。だがな]

 オイラは風を切り、赤と緑の境界線に沿って走りながら、遠くに見える黒ずきんをチラチラと見る。
 オイラは自然界で育ったからか目も耳も良い。彼の声を、なんとかキャッチできた。

 [俺が死ぬと悲しむ奴が、1人だけ居る]

 赤い男は、無情に言った。


「知るか♪」


 黒ずきんに、真っ赤な戦士、真っ赤な男が迫っている。

「待て、待ってくれ」
 と黄色。
「怪人を改造してロボにするという手もある。そうすれば超効率的で半永久的な動力を確保することができ……あひゃ……あひゃひゃ……」
「ふざけたことを抜かすな!」
 と青。
「だが喋れる怪人とは珍しい。少し対話を試みても無駄ではないとは思うが?」

 赤が仕切る。
「了、快三、戦隊の本分を忘れたのか? 怪人は破壊だけを目的とする非人間だ。例外無く消えて貰う。我ら戦隊学園の教師は、怪人を撲滅するのが仕事だろう? 我ら戦隊は、此の世に平和をもたらすのが使命だろう?」

「……その通りだ」
「そうだったね、ごめん。あひゃ」

 何が仕事だ。
 何が使命だ。

 [やめてくれ!]
 黒ずきんは2本の足を猛回転させ、赤き地に逃げようとした。
 その直後に、再び爆音がした。


 オイラは目の前だけを見て、ただひたすら走った。


 大木に到着する頃には、辺りは暗くなっていた。戦隊も、黒ずきんの姿も無かった。

 黒ずきんの黒頭巾だけが落ちていた。

 オイラはそれを拾い上げた。煤けている。
 ぽつっ、黒頭巾に涙が落ちた。

 オイラのことを対等に見てくれたのは、怪人のお前だけだったよ。


 あばよ。


「戦隊学園、か」

 あの不用心な教師め、わざわざ自分の居場所を教えていくとは。
 行ってやろうじゃないか。
 オイラの新しい冒険と、遊びの、始まりだ。


つづく

[返信][編集]



[管理事務所]
WHOCARES.JP