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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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21 :げらっち
2024/05/04(土) 14:15:07
曇り空で良かった。晴れていたら、私は外を見られない。
多数の生徒がぎゅうぎゅう詰めに押し寄せ、私も楓も押し潰されそうになった。廊下の窓、窓、窓から、生徒たちが身を乗り出し、校庭を見ている。
西校舎から学園の西方の校庭を見る。校庭の向こうは森。
誰も居ないし気配も無い。放送では怪人は西校舎に接近しているとの事だったが、どこだ?
「あ、あそこ!」
楓がそう言った。
「え? どこ?」
「あそこだよ!!」
楓は森を指さす。私は目を細める。すると、ダークフォレストグリンの木々の隙間に何か蠢く。
「何あれ……あんな動物見たこと無いよ……」
楓は私に身を寄せてきた。楓は視力が良いらしい。私の目ではよく認識できない。
動き出した。
まるで森そのものが匍匐前進してきたようだった。何だあれ。
生徒たちは戦慄し、視界に入れるのも恐ろしいというように、悲鳴を上げて窓から離れて行った。視界からシャットアウトした所で恐怖の実体はこの世から消えないのだが。
私は窓から離れずそれを見つめていた。
だが、どうしても存在を認知することができなかった。
私の目はポンコツだ。視力は悪いし、低い明度ですぐキャパオーバーするので、共感覚で補完しているんだ。
怪人相手に共感覚は役に立たなかった。
怪人が何なのか、まだ習っていないし、私にはわからない。漠然と、人類を脅かす敵という事がわかるだけだ。怪「人」と言うからには人の名残があるものと思っていた。だが怪人にイロは見られなかった。私の共感覚が作用するのは人間だけだ。動物に心が無いとは言わないが、複雑な知能と多様な性格を持っているのは人間だけだ。だから人間は無限のイロを持っている。怪人にイロが見えないという事は、人では無いという事だ。
私は共感覚での補足を諦め、一般的視力で怪人を観察することにした。
すると近寄ってくる森の正体が分かった。全身灰色で、何も着ていない裸で、生気の感じられない人型。単体では無かった。そもそも放送では怪人の単複に関する情報は無かった。怪人の大群が、音も無くするする押し寄せてくるのだ。
全身に鳥肌が立った。確かにこれは怖い。
よく見ると怪人は男も女も居るようだった。
あれは何なのか。人生を持たない、人に成り損なった生命か? いや生命であるかも怪しい。単なる人のふりをしたおがくずか?
「な、七海ちゃん! いつまで見てんの! 逃げようよ!!」
楓は私の腕を引っ張っていた。でも私はここを離れない。
いつみ先生は怪人を倒すと言った。それを見届けるんだ!
ご登場。
校舎に迫りくる怪人の波、その喫水線に、いつみ先生が躍り出た。
「戦隊学園に侵入するとは、飛んで火に入るなんとやら、愚かだねえ♪ 怪人の分際で、この学校に土足で上がり込んでくる悪い子ちゃんたちは、細胞1つ残らず消滅させて、お仕置きしてあげなくちゃ、ね」
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