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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
 ┗214

214 :げらっち
2024/06/08(土) 11:25:36

「こっちよ」
 淵藤に導かれ、私と凶華は奥に向かった。絵の具が何層にも塗られ、床は凸凹としており、山のようになっている所もあった。しかも室内なのに川が流れていた。
 最奥の部屋に着くと、広い室内に、戦隊が1組くらい入れそうな大きさの黒と白の球体が浮いていた。それぞれ四角い穴が開いている。

「あたしが開発した、〆切守牢(しめきりまもろう)よ」

 なんだその、編集者の口癖みたいな施設は。

「スペシャルクラスに入った生徒には様々な才能を持った子が居るけど、〆切を守らない、それ以前に、自分の表現を1つも形にできないような困ったちゃんも居るのよ。そういう子は、ここに閉じ込めます。この牢は作品を完成させるまで、絶対に開かない。入った人は、作品が完成するまで、絶対に出られない」

 お、恐ろしい。

「死んじまうな?」と凶華。
「言ったでしょう。作品が完成するまで、絶対に出られないと。死による解放も無いの。ここに入ったら餓死も衰弱死も起こりえない。自死もできない。寿命は存在しなくなる。ここに居る間は不死となるのよ」

 その技術をもっと別のことに使った方が良い。

「あれを見て頂戴」
 淵藤は部屋の隅を指さした。絵の具で塗ったくられた壁に引っ付いて同化しかけているが、カラフルベタベタの球体があった。
「8年前、マンガグリーンは、1200pの漫画を完成させると言ってあそこに入ったきり、今もまだ出てこないわ。彼が作品を完成させない限り、内側からも外側からも開けることはできない」

 ブルッと悪寒が走った。死ぬより辛いではないか。
 凶華は「トイレはどうするのかな……」と吞気なことを言っていた。

「今からあたしはここに入るわ」
 淵藤は黒い球体を顎で示す。その中には小さな机があり、電灯と漫画の原稿、インク瓶が置かれていた。
 淵藤はGペンを取り出し、私の目の前に突き付けた。
「芸術っていうのはね、時間との戦い。芸術家は、どんなに時をかけても自分の満足いく作品を完成させたいものよ。でも現実は残酷だわ。あたしの肉体は、来年で三十路を迎えてしまう! これ以上の留年はできないわ。真の芸術家は、〆切を守る者なのよ。あと1コマで、あたしの漫画は完成するの。でもその最後のコマが描けないの!! あたしはその1コマを何としても描き切るために、ここに入るの!!」

 淵藤は黒い球体の入り口に入った。

 私と凶華は「さよ~なら~」と言った。
「あなたたちも入るのよ!!」
 淵藤は魔法を使った。インクの塊が飛んできて、私と凶華は白い球体に押し込められた。
「ちょ!!」
 白と黒の球体の出口は、同時に閉じた。

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