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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
 ┗224

224 :げらっち
2024/06/08(土) 12:24:19

「500円お払いください」

「ええ~、500円!?」
 私たち3人は呻き声でハーモニーを奏でた。500円は高すぎる……
「でもコボレにとって必要経費じゃん。七海さん出してよリーダーでしょ?」
「いやいや、ここは実家が金持ちのミスター公一に任せよう!」
 私は彼の肩をドンと叩いた。
「なんでやねん!」
 私と佐奈は女子であることを利用してえへらえへらと彼をおだてた。公一は渋々払うことを了承し、ガマグチから大きな硬貨を取り出した。
「しゃあないな、次は無いからな? ほい500円」

「申し訳ありませんが、1人500円です」とエホンレッド。

「ええ~~!!?」

 納得いかない。
 図書室は今までタダで利用できていたはずだ。

「変じゃない? 学習のための施設なら学生は無料で使えて当然だと思うのだけど」

「変なのはどーっちだ。よーく考えてみてぇ?」

 読書スペースの方から光り。
 金の屏風を背景に、誰か歩いてきた。いつみ先生のような太陽のまばゆさでもなければ、金閣寺躁子のような金メッキの明るさですらない。単に金の衣装で身を包んだだけの女。背は平均程度だが、金色のブーツで底上げしてこれなので、実際は低いのだろう。金のミニスカートに金のセーター、金のハンチング帽を被った、黒髪ショートヘア。
 誰だコイツは。
「わたしは板金京兆那(ばんきんけちな)。金融戦隊ギンコウジャー・トウトリゴールドの一人娘だよー! よーく覚えておいてね」
 板金は幼女のような声で名乗り、金色の名刺を差し出してきた。名前の中に、数字の単位を示す語がひしめいているが、何だかけち臭い。
「あんたたちは今まで、無料で学園の施設を使ってきた。それだけじゃない。タダ飯を喰い、水道も電気も使いたいホーダイ。おねしょをすればまっさらなリネンに取り換えて貰える。でもそれって変だよねー、普通はお金を払うべきなんだよねえ?」
 喋り方にムカついたか、佐奈がつっかかる。
「戦隊の養成は世界の最優先事項です。戦隊連合が補助金を出しているから、生徒側は多くのお金を払わなくてもいいわけですよ。お金持ちしかヒーローになれないなんてことになったら世界は終わるってことくらいわかるでしょ?」
「黙ろうねおチビさん」
「!!!」
 佐奈は語彙を無くし板金にタックルしようとしたが、公一に止められた。

 板金はチッチッ、と、金のマニキュアの塗られた人差し指を振る。
「こうなったのもあんたたちのせいなんだよねぇー。あんたたちが巨大なガラクタで校舎を壊しまくったから、復興財源が必要で、それで増税となったのだあ!」
「メカノ助をガラクタって言うな!!!」と佐奈。
「増税ってなんやねん」と公一。
 板金はあかんべえ。舌に砂金がくっついていた。
「このままだと赤が出るって、パパ率いるギンコウジャーが算出したんだよね。学園の首席たちが会議を開き、増税案が可決されたんだよー」
 首席と言えば、天堂茂の顔が思い浮かぶ。
「じゃああなたも天堂茂側の人間?」
「別にそうとは言ってないよぉ。税は金脈、金のなる木! これからは何をするにも税を取られるから覚悟しときなよー! 読書税に食事税、ウォシュレット税なんかもね!! にゃはは、お金が増えるのはきもちーなあ!!」
 板金はふんぞり返って去って行った。


 というわけで、図書室への再入場はできなかった。
 夜の廊下を歩き、部室に戻る。結構時間が経ったので、楓たちは勝手に二次会を始めているかもしれない。

 私はへこたれず言った。
「アイツも天堂茂とグルだ。アイツが私たちを図書室に入れないようにしてたってことはつまり、天堂茂は星十字軍についての情報を隠匿したいんだ」

 ニッポンジャーが星十字軍を討伐したというのは、プロバガンダに違いない。
 それを隠すために増税なんて馬鹿げたことを……

「陰謀論はもういいやろ」
 公一がそう言った。
「え?」
「星十字軍は悪で決まりや。凶華を認めることはできひん」
「そんなのないよ! 凶華はイイ子だし……」

 公一は意を決したように、言った。


「お前は凶華のこと好きなんやろ!?」


 え。
「え、それは違うよ。濡れ衣戦隊ゴカイジャーだよ」
「白を切んなや!」
 本当に違う。
 私は単に、凶華のイロに惹かれ、共感覚持ちというところに自分との共通点を見つけ、近付いてみたいと思っただけだ。でもそんな弁論の余地も無く、公一はそっぽを向いて行ってしまった。捨て台詞をポイ捨てして。
「七海なんてめっちゃ嫌いやねん!!!」

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