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380.戦隊学園 ~虹光戦隊コボレンジャー~
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233 :げらっち
2024/06/10(月) 12:41:30

《赤坂いつみ》


 昼は生徒たちであんなに賑わっている食堂も、夜はしづかだ。
 薄暗い中、赤ちょうちんだけが灯る。カウンター席に5人の教師が横並びに座って居た。

「あの頃はみんな若かったよな」
 僕の右隣の青竹了は、カウンターの奥に飾られている写真を見ていた。
 Gレンジャーの5人がそろってうつる、僕たちが学園に赴任したての頃の写真だ。並びは今の席順と何ら変わらない。
「あれは、赤の日の直後のことだったな」
 かく言う彼は41歳。長身痩躯、目の下にはクマ、口の周りには青髭。青いスーツを着ている。

「懐かしいわね! あの頃私はピッチピチのハタチ……おっと、年がバレちゃうわね! みんなもまだ20代だったのよね! 今はもうおじちゃんおばちゃんの集団……」
 僕の左隣に座って居る紅一点・桃山あかりは、年齢非公開の36歳。桃色の口紅と白粉でバッチリ若作りしている。ピンクのブラウスにチェックのスカート。
 首から下がっている銀のペンダントの蓋を開ければ、彼女の愛娘の顔が目に入るだろう。今年小学校に上がったと聞く。

「女性は化粧で隠せるからいいけどな」
「うるさいわよ了! あなただけもう40代だからってひがまないの!」
 了はチッと舌打ちした。

「でもあんな所に若かりし日の写真が飾られていたんじゃ、私たちが年取ったって、生徒たちに晒してるような物だよなぁ……キッチンジャーのおばちゃんに言って、いい加減片して貰おうか」
 あかりの左隣に座る、黄瀬快三。38歳、小太りで頭髪は既に薄い。黄色いポロシャツを着ている。
「変わっていないのは1人だけ……」

「あんな写真、生徒は誰も見ちゃいないさ」

 僕はセンターの席で、バーテン代わりにグラスに赤ワインを注ぎ、魔法で皆の元に届けた。

「それじゃ乾杯だ♪」

「何に?」
 無粋なことを訊くのは了の右隣に座る、緑谷筋二郎。39歳、筋肉がはみ出しているタンクトップに、緑のボンタン。
「そんなの、各自心の中で崇める物に献杯すればいいじゃないか♪」
「では私は、この磨かれた筋肉に!!」
 ムキムキ男は太い腕でグラスを掲げた。
「俺は化学に」と了。
「僕は工学に」と快三。
「もうっ、みんな自分のことしか頭に無いの? 私は、生徒たちに!」
 あかりは僕に目線を送ってきた。
「あなたもそう思うでしょ、いつみ?」

「そうだなあ、僕は、小豆沢七海に」

 僕はグラスを小さく掲げると、くいっと口に流した。僕のグラスにだけは、白ワインが満たされていた。
 芳醇な香りで鼻腔が満たされ、頭がポワッと熱くなる。悪くない。

「呆れたな。1人の生徒に肩入れするとは」
 了はグラスを置いて僕を睨んできたが、その糾弾は、筋二郎の「おいしかったー! おかわりー!」に掻き消された。
「そういや筋二郎、和歌崎先生は? 彼女も誘ったんだがな」と了。
「和歌崎先生は今日は夜勤で来られんようだ!! 残念・無念・再来年!!」

 快三は隣席のあかりに、どんどんワインを注いでいる。
「ほらあかりちゃん、飲みなよ飲みなよ。ところで水掛先生は?」
「葵子ちゃんはお酒ダメなのよ、知ってるでしょ? もう!」
「そうだったかなぁ?」
 快三はハイペースで酒を飲む。既に赤ら顔だ。

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